肉体&右打ち改造でビジターアーチ量産へ-。阪神大山悠輔内野手(29)の歩みを追う日刊スポーツ独自企画が「走姿顕心」とタイトルをリニューアルして今季もスタートする。キャンプ特別版の前編では40歳現役を目標とした進化計画の舞台裏を独白。プロ入り時の監督でもある金本知憲氏(55)や鳥谷敬氏(42=日刊スポーツ評論家)から授かった金言を胸に、日本一4番は新たなチャレンジをスタートさせていた。【取材・構成=佐井陽介】

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日刊スポーツ読者の皆さん、大山悠輔です。今年もキャンプが始まりました。第2クールを終えて疲れはあります。とはいえ、この時期は疲れがなかったら逆に不安なもの。やりたいことはできていますし、いい時間を過ごせています。

昨季は18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を達成できました。ただ、もう日本一の余韻に浸ってはいられません。日本一になった自信は継続しつつ、また一からのスタートなので。毎年そうですが、どれだけ練習しても「結果を残せるのかな」と不安が消えることはありません。シーズンが終わった時に「ああしとけば良かった」と後悔だけはしないようにしたいと思っています。

今年は自主トレ期間から全身のウエートトレを強化しています。年末に入団1年目の監督でもある金本知憲さんと食事させてもらった時、「おまえ、体まだまだやな」と指摘されて、「やっぱりそうだよな」とふに落ちたんです。もともと「もっとパワーを上げていかないとダメだぞ」とは言われていたのですが、長く続けるための秘訣(ひけつ)を聞いて、自分はまだまだ全然甘いな、と。

先輩方からも常々「30歳を超えたら一気にガクッと来るぞ」と教わってきました。昨年も開幕直後は遠征先でもジムに通ったりしていましたが、継続することが大事。実はもうすでに「プロ入り直後からしっかりやっておけば良かった」という後悔があって…。でも、今からでもまだ遅くはないと思っています。

僕はできるだけ長く現役でやりたい。今年30歳になるので次は40歳。40歳になったら次の目標を立てたい。そう考えたら今の体では無理だなと感じています。先輩方の練習を見たり話を聞いていても、取り組み方が違うのは自分が一番感じていたので、ウエートトレはこれから続けていくつもりです。もちろんすぐに正解だと証明することはできないでしょうが、自分がやろうと決めたことで万が一失敗したとしても、それはそれで納得できるので。

本格的にウエートトレを始めてから体重は少し増えました。筋肉量も日によってですが、上がっているとは思います。何より重たいモノを持ったり上げることで、力の出し方、ボールへの力の伝え方で「あっ、こういうこともあるのか」という気付きがありました。今までは無意識に力をセーブして出し切れていなかったところを、重いモノを持つことで少し感覚をつかめた気がします。もしかしたらこれから打球の質も変わってくるかもしれません。

今、フリー打撃では右方向への打ち方も少し意識しています。自分の中で右方向への長打は課題の1つでもあるので。以前、阪神の先輩でもある鳥谷敬さんと話をさせてもらった時、「右方向に打つ時に癖がある」と教えてもらいました。自分は右に打つ際、体ごと一塁側に行ってしまう癖があって、それがもったいないと。その癖を直せたら、甲子園では難しくても神宮や横浜スタジアム、東京ドームではもっと長打を増やせるかなと思っています。

昨年末、金本さんも「ビジターでどれだけ打てるか」という話をされていました。金本さんは40本塁打を記録した05年、甲子園では15本で残りの25本は甲子園以外で打ったそうです。もちろん一番多く試合がある甲子園で打たないといけませんが、ビジターで稼ぐのも大事なことです。ホームランには当然、打点も付いてくる。打点を多く取りたいなら、ある程度はホームランも打たないといけない。今年は最低でも20本は打たないといけないと思っています。(阪神タイガース内野手)【後編に続く】

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