“崖っぷちの男”が驚異の1発でアピールを開始した。日本ハム江越大賀外野手(30)が11日、楽天との練習試合(沖縄・名護)で8回無死一塁から、左翼芝生席を越える場外勝ち越し2ランを放った。今キャンプ実戦5試合に出場し、前の打席まで8打数1安打、打率1割2分5厘と低調も、この日最後の打席でド派手な1発。12球団の対外試合1号に、新庄剛志監督(52)も“WHY”とばかりに両手のひらを上げ、喜んだ。

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江越は、あえて高めのボールに手を出した。8回無死一塁、楽天松井のストレートを振り抜くと打球は風に乗り、場外へと消えた。「打った瞬間は切れるかなと思ったんですけど、良い打ち方ができたので、ボールが返ってきて、切れずにホームランにできました」。ベンチで新庄監督が両手のひらを上にして不思議そうなポーズで出迎えると、江越も「自分が1番びっくり」と、目を丸くした。

前打席まで8打数1安打。この日も2つの空振り三振に遊ゴロとまったくいいところがなかった。新庄監督は「江越くんの1発(が出たから)ね。明日、沖縄の予報、雪らしいね」。そんなジョークを伝え聞いた江越は「北海道じゃなくて沖縄ですか? 先に謝っときます」と苦笑いだった。

ポテンシャルの高さを指揮官は、こう表現する。「パワーはゴリラぐらいあるので、当たればいい。当てなさいと。まあまあ、これで1本出たので、なんか変わってくれたらいいし」。強肩俊足と身体能力が高い江越の唯一の課題、打撃開眼へのヒントは「当てること」。シンプルだ。

昨年11月には米トレーニング施設「ドライブライン」が東京で実施した動作解析を受けた。「高めの真っすぐに対して弱いと分析していたが、その通りで。その高めに対して、大根切りじゃないが、上から(ボールをたたこうと)意識していたのは違った。右肩は下がらないように、というのは発見だった」。脱大根切りと右肩下がりの悪癖改善が、この日の高め打ちにも、つながった。

試合後はロングティーで黙々と練習。「差し込まれると右肩が下がる。ロングティーのように、ゆったり引きつけて」。欲しがらない。しっかり呼び込んで、ゴリラ級の能力を、解き放つ。【永野高輔】

【練習試合】日本ハムが楽天に勝利/詳細