阪神初代日本一監督の吉田義男氏(90=日刊スポーツ客員評論家)が28日、沖縄でのキャンプを終えた岡田タイガースをチェックした。投打の順調な仕上がりを評価しながら、球団初の連覇の条件として、チーム力の2割アップを求めた。【聞き手=寺尾博和】

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-阪神は沖縄でのキャンプを打ち上げ、ちょうど1カ月後の開幕に向かいます

吉田氏 沖縄に行きたかったのですが、ずっとスカイAで見てました。岡田監督もあえて前に出ず、選手に任せていた印象が強かった。連覇には現有戦力を2割ぐらいアップすることが必要だと思いますね。

-吉田監督で日本一になった翌86年も連覇を狙ったが、結果は3位でした

吉田氏 もちろん次の年も勝とうと、優勝争いはしましたが後半に脱落しました。広島、巨人との三つどもえを勝ち抜いた85年が精いっぱいでした。チーム力も下り坂でしたが、当時とはチーム状況が違います。今は伸び盛りです。

-2年目も「優勝」とは口に出さなかった?

吉田氏 はい。

-積極的に補強もしなかった

吉田氏 若手の突き上げに乏しく、ついトレードに走って柏原純一(日本ハム)を金銭で獲得しました。開幕から主力が故障したのも痛かったです。

-自身は連覇できなかった監督のマネジメントをどう分析していますか

吉田氏 実績のあるベテランで勝ったので、あまり“変化”を求めなかったのはあります。後で振り返った時にわかるのですが、自分の中で「情」が勝ったというか、「非情」になれなかった。若手の起用をためらったんですな。

-テレビではわかりづらいと思いますが、今年の阪神投手陣の仕上がりは?

吉田氏 先発は青柳も西勇も必要です。またやってもらわんと苦しい。村上、伊藤将、才木らもそろっている。大竹も出てくる。ただ今年はもう1人勝てるピッチャーがほしい。門別は楽しみです。リリーフはゲラと岡留の評判がいいね。あとは抑えをどうするかでしょうな。秋山にも頑張ってほしいんですけどね。

-佐藤輝は守備に重点が置いたことが打撃にもつながったのでしょうか

吉田氏 一皮むけたんと違いますか。前から指摘しているように、守備力向上が打撃にもつながる。もう1つ重心が低くなってくるといいんですがね。

-打線は大山が軸に

吉田氏 まだ力を発揮していません。30本は打てると思っています。今年は森下、前川もいますが、外国人のノイジー、ミエセスのどちらかが出てきてほしいところです。

-二遊間は

吉田氏 やはり木浪は安定している。守備も三遊間寄りが強いね。小幡はもう少し(打撃を)コンパクトにね。チーム全体的に振りが大きい感じでしたな。近本も含めてセンターラインは今年も大事ですわ。

-捕手は

吉田氏 ここはポイントで、坂本1人ではしんどいから、梅野の復調が待たれます。他の捕手も育てなあかんね。

-3月16日にABCラジオ朗読会『野球! 野球! 野球! 吉田義男90歳』が開催されます

吉田氏 この年まで野球にかかわることができたのは幸せです。わたしにはタテジマの血が流れている。連覇のカギはスタートですわ。昨年は巨人戦で12も貯金した。開幕ダッシュに尽きますわ。

▼吉田監督、岡田監督で優勝した過去2度の翌年は、大きな補強に動かなかった。86年はプロ16年目のベテラン柏原純一を金銭トレードで獲得したのみ。新人は高卒入団した遠山昭治が27試合に登板したが、他の4人は目立った成績を残せなかった。06年も16試合に登板した新外国人オクスプリングや、オリックスから前川勝彦とのトレードで加入した相木崇の13試合登板が目立つ程度。ドラフト加入した6人の活躍はなかった。今季の補強も新人を除けば新外国人のゲラ、オリックスから現役ドラフトで加入した漆原大晟の2人のみとなっている。

◆吉田義男氏が出演するABCラジオ朗読会「野球! 野球! 野球! 吉田義男90歳」が3月16日、尼崎市の「あましんアルカイックホール・オクト」で開催される。<1>お昼の部(正午開演)、<2>夕方の部(午後4時開演)の2部があり、入場料はともに全席指定で5000円(税込み)。ABCぴあやチケットぴあ、CNプレイガイドなどで発売中。問い合わせはABCチケットインフォメーション電話06・6453・6000(平日月水金の10時~15時)まで。