25歳での若さの決断に、角界に衝撃が走った。木瀬部屋の十両木崎海が、8月27日に現役を引退した。引退の理由は慢性的に抱えていた首の痛みで、手にもしびれが及んでいたという。鳥取城北高で高校横綱に輝いた木崎海は、日大では4年時に全日本選手権で3位となり、三段目100枚目格付け出しとして18年春場所でデビュー。将来を嘱望されていた。

師匠の木瀬親方(元前頭肥後ノ海)は「真面目な人間。なあなあに取っていくのも心苦しかったんだと思う」と弟子の心境を察した。首の痛みについて、師匠に相談はあっても弱音を吐くような様子はなかったという。中途半端な状態で相撲を取るべきではないと判断した木崎海の意思を、木瀬親方は「勇気がいること。男らしいと思う」と評した。

実直な雰囲気で土俵外では“癒やし系”として知られていた。十両の優勝争いに加わった昨年九州場所。取材が終わると毎日、立ち止まって報道陣に「ありがとうございます」。丁寧にペコリと頭を下げる姿は、関取の中でも異彩を放っていた。最近の最も高い買い物を問われると、10万円の電動アシスト自転車と答え「出稽古まで行くのに坂が多いから助かるんです」と笑みを浮かべた。

巡業先では毎日欠かさず土俵に上がるなど、稽古熱心さでも存在感を放っていた。木瀬親方も「相撲に対しては純粋に取り組んできた。巡業中も真面目に取り組んでいると聞いていたので」と誇らしそうに振り返った。

木崎海の出身地は沖縄県うるま市。同県出身の関取は7月場所時点で兄の十両美ノ海(27=木瀬)と2人だけで「いい成績を残して地元を盛り上げたい」と何度も語っていた。今後、両親と相談しながら治療先の病院を探すという。まだ25歳。第2の人生が明るく照らされることを、陰ながら祈っている。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)