アブドーラ小林(42=大日本)が、師匠アブドーラ・ザ・ブッチャーさん(78)の襲撃に失敗した。

99年から大日本に参戦したブッチャーさんの付け人を務めたのは約1年間。短いが、小林にとっては今でも忘れられない濃密な時間。「セクハラ以外のハラスメントを受けた。その時の恨みを晴らしたい」と襲撃を予告していた。

第1試合のメモリアルバトルロイヤルに出場した後、第3試合後に行われたブッチャーさんの引退セレモニーで付添人として、車いすを押した。腹部に2本フォークをしのばせ、背部からの急襲を狙ったが初代タイガーマスク、武藤敬司、スタン・ハンセンら花束贈呈のためリングに上がるレジェンドの姿を見て、たちまち弱気に。「こんな厳かな式になるとは…」。フォークを出す機を逸し、ブッチャーさんをかいがいしく、お世話するだけに終わった。

付け人時代は、しょっちゅうケンタッキーフライドチキンを買いに行かされ、外国人の集まる六本木の名物バー「ガスパニック」への送迎も毎回させられていた。小林は、自身の3カ月ぶりの復帰戦の際となった前日18日にもブッチャーさんについて「酔うと金払わないというのはよくありましたね。ほんとです。ガスパニックに行くと、六本木なんで駐車場料金が1万円近くするんですよ。だから車で寝て待ってました。あの人、昔のスターじゃないですか。でも、若い女性からしたら分からないわけですよ。意外ともてなかった、というのはかわいそうでした」と知られざるエピソードも明かしていた。

この日ブッチャーさんに約15年ぶりに再会した小林は、その時のリベンジどころか「偉大さが身に染みました。記憶の片隅でも覚えててもらえたのがうれしい」と感動した様子。「20万円ぐらい立て替えていましたが、チャラになりました」とすがすがしい表情で話した。【高場泉穂】