今月28日に行われるRISE横浜大会(横浜アリーナ)で格闘家デビューするプロ野球元西武の相内誠(26)は第2の人生でプロとして“初勝利”を目指す。

プロ野球時代に培った腕力でねじ伏せる。「右ストレートは通用すると思う」。がむしゃらに振り回すのではなく、タイミングを見て、コンパクトに当てることも意識する。19日の公開練習では「特に課題はない」と自信を見せた。「試合で勝てるようなスパーリング相手とやってきた。それを出すだけ」と厳しい練習で手応えを感じている。

プロ野球で培ってきた非凡なパワーには周囲も驚く。RISE伊藤代表は「フィジカルが強く才能は高い」。鍛え上げられた肉体から繰り出されるパンチや蹴りに、練習をともにした周りの選手からも「初めてとは思えない強さ」と驚く。指導する菅原コーチは「だんだんと形になってきた。1発デカイのをかましてくれると思っている」と期待する。

プロ野球に入る前から格闘技に興味を持っていた。高校時代、キックボクシングをやっていたあこがれの先輩にならい、千葉の道場に通った。「楽しいスポーツだと思った。野球界ではチャンスをものにできなかったので、格闘技界では勝ちにこだわっていきたい」。プロ野球で結果を残せず、格闘家転向の話が来た時には周囲の反対もあったが「あとで後悔したくない」と自分の意志を貫いた。

12年西武入団後、仮契約後に仮免許運転違反。その後14年には未成年ながら飲酒、喫煙も発覚した。その後も乗用車の事故、自宅待機中でのゴルフなど問題を起こし、昨年1軍未勝利のまま戦力外となった。不祥事が取りざたされるが、もともとは真っすぐ自分と向き合う純朴な人間。伊藤代表は「問題児的なこともあったが、非常に好青年。腹を据えてやるという意志なのでしっかりバックアップしていきたい」。菅原コーチも「挨拶とかも礼儀正しいし、人としてちゃんとしているから、しっかり教えている」と話す。

「不安と楽しみ半々」という相内。高校時代からエースとして大観客の前で登板しており「人前で何かをするのは少しはなれているのかな」と緊張感はさほどないという。転向決意後すぐに野球道具は処分し、心機一転。「野球界から転向してベルトを取った人を聞いた事ないので、頂点に立ってベルトを巻きたい」と野望も明かす。「怖さはない」。相手の顔面めがけてこん身の右ストレートをぶち込む。【松熊洋介】

◆相内誠(あいうち・まこと) 1994年(平6)7月23日、千葉県生まれ。富津市立天羽中学校から千葉国際高校(現・翔凜高等学校)に進学。高校時代は「房総のダルビッシュ」と呼ばれた。12年ドラフト2位で西武に指名。14年1軍デビュー。20年に戦力外。1軍通算成績は0勝7敗。防10・05。185センチ、65キロ。