フロイド・メイウェザー(米国)は、プロボクシング5階級制覇王者で50戦全勝(27KO)の完璧な戦績を残して17年に引退した。現役時代にはオスカー・デラホーヤ、サウル・アルバレス、マニー・パッキャオら、そうそうたる顔触れと数々の『スーパーファイト』を勝ち抜き、ファイトマネーとペイ・パー・ビュー(PPV)の売り上げの歩合を含めて総額8億ドル(約1000億円)以上を稼ぎ出したと言われる。

金メダル候補だった96年アトランタ五輪は、フェザー級で出場した銅メダル。同年のプロデビュー戦の報酬は2500ドル(約25万円)だった。金額が一気に急上昇したのが、07年にWBC世界スーパーウエルター級王者オスカー・デラホーヤ(米国)を撃破して無敗で5階級制覇を達成した一戦。判定勝ちしたメイウェザーはPPVの歩合も含めて2500万ドル(約30億円)を稼ぎ出した。

その後もスーパーファイトの主役として不敗を続けて、13年にはケーブルテレビのショータイムと6試合2億ドル(約200億円)の大型契約を締結した。

15年5月の世界ウエルター級王座統一戦で、史上最多6階級制覇のWBO王者マニー・パッキャオを判定で下したWBAスーパー王者だったメイウェザーは、ファイトマネー1億2000万ドル(約144億円)に、PPVの歩合を加算した2億3000万ドル(約276億円)を手にした。当時のボクシング史上最高額の報酬だった。

この報酬額を上回ったのが、17年8月の総合格闘技のUFC2階級制覇王者コナー・マクレガー戦との現役最後の試合。メイウェザーは1億ドルのファイトマネーと、PPVの売り上げの歩合を換算して2億7500万ドル(約325億円)を稼いだと言われる。

引退後も、メイウェザーの『50戦不敗の5階級制覇王者』という威光は、衰えなかった。その金看板と知名度に、ボクシング界以外のプロモーターや格闘技団体などからオファーが相次ぎ、メイウェザーもボクシングルールを前提とした『エキシビション』でリングに上がり、稼ぎ続けた。

以下はあくまで本人の発言によるものだが、18年12月の那須川天心戦では、後に「139秒間に900万ドル(9億9000万円)を稼いだ」(英紙ザ・サン)と語っている。

21年6月の人気ユーチューバーのローガン・ポールとの一戦では、試合後に「これは合法的な銀行強盗だ」と語り、スポンサー収入3000万ドルを含む1億ドル(約110億円)を稼いだと主張した。

22年5月にUAEで開催されたドン・ムーア戦では本人の発言はなかったが、コーチのジェラルド・タッカー氏がインスタグラムで「少なくとも1000万ドル(約13億円)を稼いだ」と明かしている。

今回の朝倉未来戦ではRIZINの榊原信行CEOが「前回は超えています」と説明。「2桁(億円)か」という問い掛けに「そうです」とうなずき、日本円で10億円を超えていることを認めた。

そうするとメイウェザーは引退後のエキシビション4試合だけで、すでに日本円で150億円近くの報酬をかせぎ出していることになる。

すでに45歳。ポール戦、ムーア戦を見る限り、往年のスピードやパンチの切れはない。それでも勝ち続けているのは、ボクシング技術の未熟な格闘技系の選手たちと、ボクシングルールのエキシビションという自らの土俵で戦い続けているからだ。

レジェントとして名前を残す幾多の名ボクサーでさえ、決定打を当てることができなかったメイウェザーのディフェンス技術を、格闘技系の選手が打ち破るのは至難の業。

「マネー」の異名を取るメイウェザーの「合法的な銀行強盗」は、彼が一敗地にまみれるまで、続くのだろう。(レートは当時の換算)