横綱白鵬(34=宮城野)が、早くも単独トップに立った。1敗勢5人が軒並み敗れる中、結びの一番で西前頭2枚目明生(24=立浪)を上手出し投げで下し、1敗をキープした。

1敗の白鵬を2敗で朝乃山、小結北勝富士ら12人が追う大混戦。関脇御嶽海は宝富士に寄り切られて4敗目を喫し、場所後の大関昇進は絶望的となった。

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イキのいい若手との初顔合わせは、一瞬で決着がついた。白鵬が左上手を取ると、前のめりの明生はそのままパタリと倒れた。1秒足らずの勝負に、消化不良かのごとく首をひねった。「省エネだね。決まるとは思わなかった」と口角を上げた。1敗の5人が崩れ、同じ1敗の明生と直接対決。前日5日目に高安から殊勲星を奪った、気鋭の24歳の挑戦をはね除けた。

次世代を担う相手との一番が楽しみだった。稽古熱心で知られる明生を、白鵬もよく観察しており「稽古は今しかない。今の稽古が3年後に出る。3年後、いい力士になる」と期待を寄せていた。この日は「動き回るから」とスピードを警戒していたが、その持ち味すら発揮させなかった。

初顔にはめっぽう強い。これで昨年夏場所の豊山戦から5連勝。06年初場所7日目で元小結栃乃花に敗れて以来、初顔に黒星を喫したのは翔天狼、荒鷲、貴ノ岩、阿炎の4人だけ。その間に57個の白星を積み重ね、勝率は93%と圧倒的だ。

孤高の存在として突き進む。横綱鶴竜、大関豪栄道ら上位陣を含め、5日目までに幕内力士が6人休場する異例の事態となった今場所。「1人寂しくやっています」と吐露した。全勝優勝した3月の春場所8日目以来の単独トップに立った心境を問われても「そうっすね」と言葉は少なかった。

この日の朝稽古後、山に囲まれた部屋宿舎から竹林を見つめて「竹は芽が出るまで長いけど、出ると一気に伸びるんだよね」。若手の台頭を待ち望むようにぽつりとつぶやいた。9月に日本国籍を取得して“日本人初優勝”に照準を定める今場所。若手も引っ張り上げ、1年を納める。【佐藤礼征】