9場所ぶりに幕内復帰を果たした東前頭14枚目千代の国(30=九重)が、幕内では自己最長の初日から6連勝を飾った。小兵の炎鵬に押し込まれたが、土俵際で冷静にはたき込みを決めた。3年前に三役目前まで番付を上げながら、たび重なるけがで2度の幕下陥落を経験。同じ部屋の関取衆から「力士のかがみ」と呼ばれる努力家が、2横綱2大関が休場した場所を盛り上げる。

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初顔合わせとなったくせ者の動きに、余裕を持って対応した。「焦らず見ていこう」と千代の国。立ち合いは踏み込まず、後退しつつ左に回り込んで、前のめりになった炎鵬の背中を押し込んだ。平幕で唯一の勝ちっ放しだが「特に何も」。多くを語らず、古風な雰囲気を漂わせた。

けがに悩まされてきた苦労人だ。直近では幕内だった昨年初場所で左膝靱帯(じんたい)を損傷。4場所連続で休場して、西幕下46枚目まで番付を下げた。今場所も右肩や古傷の左膝に分厚いテーピングを施すが、患部の状態については初日から「大丈夫」の一点張り。“やせ我慢”を貫く。

部屋の誰よりも早く起きて、四股を踏む。幕下下位まで番付を落とした昨年秋場所前の北海道合宿。稽古前に約1時間かけてテーピングを着用し、部屋の序ノ口力士よりも先に稽古場へ向かった。当時の稽古では序二段相手にも苦戦。「(左膝の)回復が遅く、自分が思っている以上に動いてくれない。朝から晩まで、どうやったら強くなるんだろうとずっと考えていた」。葛藤の日々を乗り越えてきた。

同部屋の幕内、千代大龍は「千代の国は力士のかがみ。けがをしても何回も上がってくる。見習うべきところが100、200くらいある」と言い切る。人望も厚い千代の国の最高位は、17年夏場所の東前頭筆頭。「上(三役)にいきたいが、1日一番しか取れない」。目前に迫っていた三役を目指し、淡々と歩みを進める。【佐藤礼征】