映画な生活

ごう音鳴り響く着弾の衝撃…戦車戦に特化した異色作

近年ではブラッド・ピットが主演した「フューリー」(14年)が記憶に残っているが、戦車にスポットを当てた戦争映画はそれほど多くない。

「Tー34 レジェンド・オブ・ウォー」の1場面(C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018
「Tー34 レジェンド・オブ・ウォー」の1場面(C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

25日公開のロシア映画「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」は、戦車対戦車のバトルに特化した異色作だ。鋼鉄の軋みや肌触り、気を失いそうなごう音が鳴り響く着弾の衝撃…戦車戦のリアルが伝わってくる。

操車能力にたけたソ連兵のニコライは、防衛線にただ1両残ったT-34の戦車長を任された。41年、ナチス・ドイツの侵攻で、ソ連軍は苦戦を強いられている。ニコライは地の利を生かし、ドイツの戦車中隊を翻弄(ほんろう)。1発の砲弾で2両を撃破するなど、奮戦するが、敵の戦車長イェーガーとの一騎打ちの末に捕虜となってしまう。

44年、ニコライは収容所でSS装甲師団長となったイェーガーと再会する。戦車兵育成のために実際にソ連軍の戦車を「的」にすることを思い立ったイェーガーは、ニコライに戦場で走行不能となったT-34の修理を命じる。捕虜の中にはかつての乗員3人もいて作業に加わる。ニコライはそのT-34の中に死体の他、6発の砲弾を発見する。

ドイツの戦車軍団が集う演習の日に向け、ニコライはある奇策の準備を始めるが…。

T-34は一撃で戦車を撃破できる76・2ミリ砲を装備し、対戦車砲弾を跳ね返す傾斜装甲で守られている。さらには走行速度でも当時最速だった。一方で、居住性や操作性に難があり、「人間が操作する兵器」の練度としてはドイツのパンターやティーガーの方が上だったと言われている。

この前提からすれば、ニコライ以下乗員4人のスキルと忍耐力があれば対独戦車戦で優位に立てることになる。ヒーロー・ストーリーのお膳立ては整っているわけだ。

農村での戦いでは馬小屋にすっぽり隠れ、市街戦では建物や坂道の死角から機会をうかがう。頭脳戦にはきりきりするような緊張感がある。そして装弾から照準を合わせて砲撃するまでのメカニズムには、現代のデジタル戦とは違った金属と汗のにおいがする。

ロシア映画界の重鎮ニキータ・ミハルコフのプロデュース。監督・脚本のアレクセイ・シドロフと撮影監督のミハイル・ミラシンはテレビドラマのヒットメーカーだそうで、エンターテインメントを極めようという思いが作品の端々ににじんでいる。

キャストにも外しがない。ニコライ役のアレクサンドル・ペトロフはいかにもアクションスターという面構え、宿敵イェーガーにはドイツ出身で「ジェイソン・ボーン」にも出ていたヴィンツェンツ・キーファー、紅一点のイリーナ・ストラシェンバウムも設定になじんだ配役で、素顔が美しい。

戦争の残酷さを随所に伝えながら、想定を超えた戦車アクションが新鮮だ。【相原斎】

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」の1場(C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018
「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」の1場(C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

映画のない生活なんて、考えられない。映画は人生を豊かにする--。洋画、邦画とわず、三十数年にわたって映画と制作現場を見つめてきた相原斎記者が、銀幕とそこに関わる人々の魅力を散りばめたコラムです。

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