今年も残すところ3カ月を切りましたが、ハリウッドでは日本が題材や舞台になった映画が続々と公開を控えています。しかも、大物俳優や監督らが手掛ける大作で、日本のみならずハリウッドでも大きな注目を集めそうです。

 この秋に全米公開を控えている1本目は、ニコラス・ケイジ主演の「USS Indianapolis:Men of Courage」。本作は、第二次世界大戦末期の1945年に秘密裏に原子爆弾を運んでいたインディアナポリス号が、帰還中にフィリピン沖で日本軍に発見されて攻撃された実話を基にした物語です。日本軍の潜水艦による魚雷攻撃で沈没したインディアナポリス号の乗組員たちの海難史に残る地獄の漂流と、その後の軍法会議を描いたストーリーで、インディアナポリス号を撃沈させた伊号第五十八潜水艦の艦長、橋本以行中佐役は、「ラストサムライ」(03年)や「硫黄島からの手紙」(06年)などで活躍するロサンゼルス在住の俳優竹内豊が演じています。

 メル・ギブソンが10年ぶりにメガホンをとり、アンドリュー・ガーフィールドが主演する「ハクソー・リッジ」は、第二次世界大戦の沖縄に従軍し、数多くの兵士を救った衛生兵の実話を描いた作品です。9月に開催されたヴェネチア国際映画祭でプレミア上映された際には、およそ10分間のスタンディングオベーションで喝采を浴び、私生活のトラブルが原因で第一線から遠ざかっていたギブソンが見事な復活を果たしたと絶賛されました。武器を持って戦うことを拒否し、日本兵を一人も殺さずに負傷した仲間75名もの命を救い、名誉勲章を授与されたデズモンド・ドスを描いたヒューマンドラマです。舞台となる沖縄でロケは行わずにオーストラリアで撮影したことなどで批判の声もありましたが、オスカー狙いの作品として注目されています。

 最後は賞レースに合わせて12月23日に米国での公開が決まったマーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の歴史小説を映画化した「沈黙 サイレンス」。江戸時代初期のキリシタン弾圧について描いた同作には、日本からは浅野忠信、窪塚洋介、加瀬亮、イッセー尾形らが出演。キリスト教の布教活動のため日本に渡った高名な宣教師クリストバン・フェレイラをリーアム・ニーソン、キリシタン弾圧によって棄教した知らせを受けて日本に駆けつけた弟子をアンドリュー・ガーフィールドが演じている他、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のアダム・ドライバーら豪華キャストが共演します。「タクシードライバー」(76年)や「レイジング・ブル」(80年)「ディパーテッド」(06年)など数々の傑作を生みだしてきたスコセッシ監督が長年にわたって映画化を熱望してきた本作は、日本のみならず全米でも注目を集めています。

 もしかすると、これらの作品がこれから本格化する今年の賞レースに名乗りをあげることになるかしれません。また、来年はジャレッド・レト主演で浅野忠信と共演する第二次世界大戦後の日本を舞台にヤクザの仲間入りを果たした元米兵を描いたアクション「ザ・アウトサイダー」なども公開を控えており、これからしばらく日本人には楽しみが増えそうです。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)