沖縄を舞台にして放送中のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」に、沖縄戦で亡くなった人たちの遺骨・遺品を収集し、家族のもとに戻す活動を続ける老人嘉手刈(かでかる)源次が登場した。演じるのは沖縄出身で、青年座の座友でもあるベテラン俳優津嘉山正種(78)だった。
嘉手刈のもとを訪れ、遺族のお礼の手紙を手渡した和彦(宮沢氷魚)に心を開いて、語る場面が反響をよんだ。嘉手刈は言う。「あの戦争で人は人でなくなることをした。自分の子供に、あの時のことを話できない人はもう、たくさんいるわけさ。戦争経験者もどんどん死んで、そのうちだれもいなくなる。何とか伝えなくちゃいかん」。
言葉の1つ1つに説得力のある演技が光っていた。津嘉山はこの役を演じるにあたって「無心に、が、懸命に演じたい。いや、真摯(しんし)に務めたい」と並々ならぬ思いを明かしていた。ネットでも、「本物の凄みを感じた」「圧倒的な存在感」などと称賛する言葉があふれた。
津嘉山にとって、嘉手刈の言葉は単にせりふではなく、自身の思いともつながっている。津嘉山が一人語り「戦世を語る」を続けているけれど、それは沖縄戦をくぐり抜けた人たちの証言をもとに構成され、自らが台本・演出を手掛けた。そこには避難した壕(ごう)から軍によって追い出された人、殺された幼児、スパイと疑われて惨殺された人と、戦争の極限状況が描かれている。
津嘉山が一人語りを続けるのは「戦争を起こしてはいけない」ということに尽きるのだろう。クモ膜下出血、脳梗塞などで何度か倒れて、舞台を降板するなどしたが、その度に懸命のリハビリで復活してきた。嘉手刈という存在は、津嘉山の半生とも重なっている。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)




