真冬になり唇が乾燥する季節になったが、外見やデザイン、商品名が、いずれも似ている印象がある「メンターム」と「メンソレータム」のリップスティックを同時購入。

商品名もデザインも似ている気がする「メンターム」と「メンソレータム」のリップスティック。背景には“歴史”があった…
商品名もデザインも似ている気がする「メンターム」と「メンソレータム」のリップスティック。背景には“歴史”があった…

ともに緑を基調にしたパッケージで、本体も濃い緑にアルファベットの白い文字で商品名が書かれているなどそっくりで、「メン」で始まる名称も思わず間違えそうになるほど。

なぜこうも「似ている」のか。かなりさかのぼると、その理由が見えてきた。

現在、メンタームは近江兄弟社(滋賀県近江八幡市)が販売しており、メンソレータムはロート製薬(大阪市)である。

もともと米国「メンソレータム社」の商品だったメンソレータムは、キリスト教伝道のため来日し、滋賀県立八幡商業学校に英語教師として赴任した米国人ウィリアム・メレル・ヴォーリズさん(1964年死去)が1920年におこした近江兄弟社(当時は前身会社・近江セールズ株式会社)が、日本における販売権を持っていたという。

しかし、オイルショックの影響などもあり、1974年に近江兄弟社が経営破綻し、メンソレータムの販売権を失ってしまった。その後1975年、ロート製薬がメンソレータムの販売権を取得し、現在に至っている。

一方、経営破綻した近江兄弟社は1975年から、メンソレータムの略称として商標登録していた「メンターム」の名を用い、現在も販売されている薬用のスキンケア商品や塗り薬、リップクリームなどの製造を開始。大鵬薬品工業の支援も得て再建の道を歩み、立ち直ったという。

今回、同時購入した2つのリップクリーム製品の説明文書を読むと、いずれも有効成分は「dl-カンフル」「l-メントール」となっており、同じ。その他の成分は多少違いがあるが、おおむね同様の成分構成と思われる。

薬局やコンビニなどでこの「メンターム」と「メンソレータム」は並んで販売されていることも多く、「なぜ似ているのか」と疑問を持ったことがある人も少なくないかもしれない。冬の厳寒の夜、両リップクリームを塗りながら、その歴史に思いをはせるものである。

【文化社会部・Hデスク】