重い。ひたすら重い。本作を見た第一印象だ。

本作では、これまで多くの作品で疑似家族を描いてきた白石和弥監督(44)が、血のつながった本当の家族を扱った。だがそれは、普通の家族ではない。子どもたちに暴力を振るう父親を母親が殺害。殺人犯の母親をもつ特殊な家族を描いている。「お母さん、さっき…お父さんを殺しました」。仮に父親からDVを受けていたとしても、母親からこんな宣言をされたらと思うと気が重くなった。

母親を田中裕子(64)、3きょうだいの長男を鈴木亮平(36)次男を佐藤健(30)長女を松岡茉優(24)が演じている。中でも主演佐藤の心に闇を抱える演技は圧巻だ。母親の言葉を額面通りに受け取り実行するが、それは家族にとっての裏切り行為。この辺の構図は白石監督らしさを感じた。

また地方が舞台になっている点にも注目したい。近隣住民との付き合いが希薄になった都会ではなく、そういった付き合いが比較的残っている地方を舞台にすることで、より状況が浮き彫りになる。これも白石監督ならではだろう。

ひたすら重い作品だが、その重さこそが家族愛の証しだと考えさせられた。【川田和博】

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