もう少し、言葉を足せば、伝わるはずなのに…。もう少し、素直な気持ちになればわかり合えるはずなのに…。愛情表現が不器用な父と、早く大人になりすぎた息子とのぶつかり合いに何度も、感情が揺さぶられた。

ハリウッドの人気子役として活躍するオーティスは、無職で「ステージパパ」のジェームズと2人暮らし。2人は特別な絆で結ばれていた。突然、感情を爆発させる父に日々、振り回されながらも、少年は、もがきながら成長していく。

「トランスフォーマー」シリーズのシャイア・ラブーフの子役時代の父とのトラウマ(心的外傷)をつづった手記がもとになっている。恵まれない家庭に育ち、「稼げるから」と12歳で俳優デビューしたラブーフ。自身のつらい過去をもとに脚本を執筆し、元ロデオ道化師の父ジェームズ役として出演もする。過去の記憶に苦しみ、葛藤する姿を痛々しく演じている。

父が息子に淡々と話すシーンがある。「みんな恨みがある。みんな誰かを恨んでいる」「お前にもいる。だけど、恨みを捨てないと、命取りになるぞ」。泥水をすすりながら、生きてきた男の言葉が重い。【松浦隆司】

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