雪組新トップ彩風咲奈が、大ヒット漫画を原作にした「CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」と、バラエティーに富むショー「Fire Fever!」で本拠地お披露目を迎える。所信表明は「退団するその日まで、彩風咲奈の男役を完成させたい」。目指す「正統派男役」へ-。新生雪組を率いて第1歩を刻む。兵庫・宝塚大劇場は8月7日~9月13日。東京宝塚劇場は10月2日~11月14日。

8頭身スタイルでもファンを魅了する雪組新トップ彩風咲奈
8頭身スタイルでもファンを魅了する雪組新トップ彩風咲奈

理想的な8頭身スタイル。女性のあこがれる男性像を追求し、雪組一筋の生え抜きでトップに就いた。

「作品をより良いものにしていくことは、どの立場でも変わらない。でも、ひとつ-。今までは(前トップ)望海(風斗)さんが進む方向を見て、下級生にも望海さんと一緒に-と伝えていたんですが、今は自分が示さなきゃいけない」

新人公演にも5度主演した“雪組の御曹司”は、トップ本拠地初作品で「CITY HUNTER」の主人公、冴羽■にふんする。

「お稽古場でも漫画を手に持ち、家に帰ったらアニメを1話は見る。なるべく世界観に触れるように心がけています」。フランス版の実写映画も見た。

「冴羽■はスーパーヒーローで、少し女性にだらしなくチャーミング。締めるところは締めてかっこいい。枠にとらわれすぎず、自由にぶつかっていきたい」

セクシーな場面には「そこは宝塚版(笑い)。その部分がないと冴羽■ではないと思うので、うまく融合できたら」とほほ笑む。

雪組は早霧せいなのトップ時代、「ルパン三世」「るろうに剣心」を上演。彩風も出演していた。

「その経験は自分に勇気をくれる。早霧さんがルパン三世、るろうに剣心に挑戦されていた姿を間近で見させていただいていた」

就任後、初作品は全国ツアー。トップの大羽根は「重たかった…ですが、あまり重いと感じなかった」と話す。昨年、初のツアー主演作が大阪公演に変更。2年越しに実現したツアーゆえ、緊張や不安よりも喜びが勝った。目指すトップ道は「前向きに挑戦」だ。

「どの方も、どんなときも必ず前を向いて、責任と自信を持って挑戦されていた。たとえ迷っても、進むことをやめてはダメ。失敗を恐れず挑戦していきたい。宝塚の男役として、最終…退団するその日まで、彩風咲奈の男役を見つける」

雪組新トップに就き、本拠地お披露目を控える彩風咲奈
雪組新トップに就き、本拠地お披露目を控える彩風咲奈

トップお披露目の全国ツアーで宝塚の人気演目を上演し、感じたことがある。

「宝塚の男役、伝統的な、といいますか-。長い歴史を紡いでくださった諸先輩方…『正統派の男役』という言葉が一番近いでしょうか。私も、先輩方からもっと勉強して、紡いでいけるような存在になれたら」

前トップ望海風斗からは心構えとともに「何かあったら連絡してね」と言われた。多くの先輩トップを思えば「今の私では到底かなわない。理想と現実の違いはたくさん」。仲間の存在が大きな支えになる。

「(雪組一筋で)今まで失敗も、かっこ悪いところも、稽古場でたくさん見せているからこそ、体当たりでお稽古できています」 相手役に迎えた朝月希和とは、最初に雪組に異動してきたときから縁があった。

「最初のお芝居で夫婦役、ショーでも組ませていただき、しっかり娘役の技術を学んできたんだな、と。その後も組み、彼女に『こうして』と言うことはあまりなく。再び花組へ組替えになり、もう一緒に舞台に立つことはなかなかないのかなと思っていたら、また雪組に戻ってきてくれた」

その朝月と今、新生雪組でトップコンビを組む。

「彼女を信頼しているので、初めから注文をつけるのではなく、彼女が表現してくるものと、一緒にセッションしたい。希和ちゃんには、1人でも輝いている娘役さんになってほしい。切磋琢磨(せっさたくま)しながらやっていきたい」

組としては、自身の思う雪組の良さを大切にしたいとも。「上級生、下級生関係なく発言しあえる、意見交換できる環境。稽古場では、ひとつの作品を作る仲間なので、それぞれ自由に発揮できたら」。ただ、考えを表現するには「勇気やきっかけ」も必要だ。

「私自身(先輩からの)多くの言葉で救っていただきました。私も仲間に声を掛けていきたい」。自由に考えを表現、発揮し、競い合い作品を磨き上げる。その集団の先頭に“御曹司”が立った。【村上久美子】

雪組新トップとして、組を率いる覚悟を語った彩風咲奈
雪組新トップとして、組を率いる覚悟を語った彩風咲奈

<朝月とのデュエットも>

ショーは演出の稲葉太地氏が「新たな雪組の誕生をお祝いしてくださっている」構成。芝居の原作が人気漫画で、宝塚になじみのないファンのことも考慮。情熱系やしっとり系の場面もあり「体力の限界を超えていくぐらい」のパワーを届ける覚悟だ。朝月とのデュエットも見せ場のひとつ。朝月には「最初は、男役のたて方やスカートさばきなど娘役の技術が高い、完璧な印象だった。でも普段は意外と抜けたところもあって人間らしい」。そのギャップも魅力と話した。

◆ミュージカル「CITY HUNTER」-盗まれたXYZ-(脚本・演出=斎藤吉正) 北条司氏原作の「シティーハンター」は、85年「週刊少年ジャンプ」で連載開始。累計部数は5000万部を超え、19年には新作劇場アニメ映画とフランス実写版映画が制作された。舞台化は初。新宿を舞台に「スイーパー(始末屋)」として生きる冴羽■(彩風咲奈)は、美女がらみか、依頼人の訴えに響いた時のみ、オファーを受ける。彩風が、ハードボイルドでコミカルな魅力を持つ主人公に臨む。

◆ショーオルケスタ「Fire Fever!」(作・演出=稲葉太地) 彩風を中心とした新生雪組メンバーが、舞台上で火花を散らすように競い合う。炎のように熱くダイナミックなショー作品。

☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛県大洲市生まれ。07年に首席入団。雪組配属。新人主演は5回。長身で脚長、小顔と抜群のスタイルでも注目。14年「パルムの僧院」で宝塚バウホール単独初主演。17年「CAPTAIN NEMO」で東上初主演。昨年全国ツアー初主演予定もコロナ禍で変更。今年6月「ヴェネチアの紋章」で全国ツアー実現。身長173センチ。愛称「さき」。

※■はけものへんに尞