北島三郎「月夜酒」、水森かおり「ひとり薩摩路」などを手がけた作詞家下地亜記子(しもじ・あきこ、本名同じ)さんが17日、肺がんで死去していたことが20日、分かった。72歳だった。三重県出身。葬儀・告別式は近親者で行った。

 長男龍魔さん(41)によると、15年前に肺がんで肺の一部を切除。6年前には間質性肺炎と診断された。昨年5月は新たな肺がんが見つかり、医師から「年内の余命」と言われたが、旺盛な創作意欲を失うことはなく、今年に入っても20作以上を作ってきた。今年9月に都内の自宅で転倒して、大腿(だいたい)骨を骨折。約1カ月半入院をして、退院後は自宅で治療と療養に努めていたが、17日午前8時13分、龍魔さんにみとられながら旅立った。

 出版社勤務をへて、コピーライターになった下地さんはデザイン編集事務所を設立。やがて作詞の勉強を初めてて、83年に東京ロマンチカの「また逢えるような顔をして」で作詞家デビューした。

 これまでに五木ひろし「九頭竜川」、細川たかし「しぐれの港」、藤あや子「かげろう」「雪荒野」、香田晋「手酌酒」や市川由紀乃「おんなの祭り」など600曲以上を世に送り出してきた。常々、「優しさと温かさが根底に流れている詞を心掛けている。詞で夢を伝えたい」と話していたという。

 今年の「日本作詩大賞」(テレビ東京系で12月1日午後7時58分放送)の大賞候補ノミネート13作品のうち、「白雪草」(増位山太志郎)「流れ雲」(北山たけし)の2作が選ばれている。下地さんは、同番組に出演することを楽しみにしていて、美容院に通い、着ていく洋服を選ぶ準備をしていたという。龍魔さんは「最後まで創作意欲は衰えずに、仕事の電話をしていた。作詞という仕事が大好きな母でした」としのんだ。