演歌歌手坂本冬美(51)が14日、故郷の和歌山・上富田町(かみとんだちょう)で、新曲「ただいま故郷(ふるさと)」(発売未定)の歌碑除幕式を行った。

 町制施行60周年記念事業の一環として同曲を制作して、坂本が歌唱。歌碑の隣には坂本が揮毫(きごう)した「夢」の文字を刻んだ石碑も置かれている。

 歌手を夢見て、作曲家猪俣公章氏の内弟子になるために上京したのが86年。それまでは、同町で生まれ育ち、町内の小中高校に通っていた。

 「19歳の時に、リュック1つでジーパンをはいて、この町を出ました。当時は、本当に歌手になれるかどうかも分からないし、ましてヒット曲を出せるなんて思ってもいなかった」と振り返った。

 そして「悩んだり、疲れた時には故郷が温かく私を励ましてくれた。歌手になって32年。ここまで頑張れたのは故郷のおかげです」と感謝。「『ただいま故郷』と出会えて心が熱くなった。まだ、CD発売が決まっていないけれど、それでは罰が当たります。この曲が長く愛されるように、これから生まれてくる子どもたちに『坂本冬美ってだれ?』と言われないように、精進していきます。上富田町の代表として頑張ります」と誓った。

 坂本の“故郷愛”は本物だ。87年に歌手デビューをした翌年には、早くも「里帰りコンサート」を行い、母校の熊野高校で記念植樹を実施。今でも同校の校庭には、大きなサザンカが後輩たちを見守っている。

 和歌山県は08年に、坂本を県の「ふるさと大使」に任命し、15年には同県で行われた国体のイメージソング「明日へと」の歌唱を依頼。今ではすっかり“和歌山の顔”として、坂本冬美の名前が定着している。

 「ただいま故郷」の歌詞には「なつかしい駅に 降り立てば 春が手招き してくれる 初恋 思い出 友の顔」とある。実は坂本は中1の時に同町で初恋を経験した。

 「この曲を歌うと学生時代を思い出します。初恋の人と初めてのデートをしたことなど…。その相手? 昔はイケメンだったけど、今は見る影もないのよ」とジョークで笑わせた。

 最後にファンにメッセージを求めると「全国の人にこの曲をぜひ届けたいと思います。嫁にも行かず、これからも歌い続けますよ」。ユニークな“冬美節”でさらなる飛躍を誓った。

 歌碑除幕式の後は、上富田文化会館でライブを実施。ヒット曲「夜桜お七」「あばれ太鼓」のほか、「ただいま故郷」や町のイメージソング「鳳凰の町」を歌唱して約700人のファンを大いに喜ばせた。