ロシア出身のバリトン歌手、ヴィタリが26日に日本の名曲を集めたCD「『ありがとう』を風にのせて-日本名歌集-」を発売する。来月28日には東京・上野の東京文化会館では「ヴィタリ 魅惑のバリトン・リサイタル」を開く。

「『ありがとう』を-」は「荒城の月」「この道」「浜千鳥」「武田の子守唄」「見上げてごらん夜の星を」など日本の誇る名曲22曲に、オリジナル「ありがとう」を加えた全23曲。金髪青い目の典型的なロシア人のイケメンのヴィタリだが、流ちょうな日本語のバリトンボイスで朗々と歌い上げている。「日本歌曲のCDを作るとは思っていなかった」というヴィタリだが、「ありがとう」を作曲した歳森今日子氏から後押しを受けて「日本の皆さんへの感謝の気持ちを込めて歌いました」と言う。

ロシアのサンクトペテルブルク生まれで、声楽を学びオペラ、ミュージカルで活躍、08年に初来日した。日本の歌に出会ったのは09年だった。世界中の歌を集めたPVで、故美空ひばりさんの「川の流れのように」を見たことだった。「誰がオリジナルかと思ったら、ひばりさんだった。声楽家として天才。演歌、ポップス、ジャズまで上手に歌い上げていた。それで日本の歌に興味を持って、13年から日本でコンサート活動をするようになりました」と言う。

15年からは日本に住むようになった。10月28日のコンサートは、日本での演奏活動5周年を記念したものだ。「初来日から10年。日本で活動するようになって5年。東京文化会館は、初めて日本でステージに立った、私にとって特別なホールなんです。感謝の気持ちを、歌で直に伝えたいと思っています」と話した。日本での師匠・塚田佳男氏が、山田剛史氏とともにピアノ伴奏を担当する。

13年から日本語の勉強を初めて、今は癖のないきれいな日本語を話す。「最初の日本語の先生は、美空ひばりさんです。歌声だけじゃなく、ひばりさんは166本もの映画に出ているので、それを見て覚えました」。日本に住んで3年半。「08年に初めて日本に来た時から、いつかは日本に住みたいと思っていました。夢がかないました。日本食もおにぎり、梅干しが大好き」と笑った。