TBS系で放送された「まんが日本昔ばなし」で20年間にわたり声優を務め、演技派女優として活躍した市原悦子(いちはら・えつこ)さんが12日午後1時31分に心不全のため都内の病院で亡くなった。82歳。昨年12月に盲腸となり、正月5日から入院していた。平成最後の年に、多くの人に愛され、親しまれた女優がまた1人、この世を去った。通夜は17日午後6時、葬儀は18日午前11時から、いずれも東京・青山葬儀所で営まれる。

市原さんは、テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」で20年間コンビを組んだ俳優常田富士男さん(享年81)と天国でも再会する約束をしていた。18年7月に常田さんが亡くなった際に「あちらでお会いしたら、また一緒に昔話の語りをやりましょうね」とコメントをしていた。

訃報を知った時、「びっくりした。何よりも大事な相棒でした」と、最高のパートナーを失ったことを悲しんでいた。「雨の日もやりが降る日も録音を共にしました。社会のスピードは速くなっていったけれど、2人ともそういうことには動じず、じっくりとやりました。(常田さんは)優しくて怖い、いいおじいちゃんで、うらやましかった」と語っていた。

アニメの語り口がゆっくりだったのには、大きな理由があったという。それは「世の中の大きな流れから少し外れた人たちに、共感の焦点を合わしている」との信念だった。「子どもが対象」ということも一切考えなかったという。

「日本昔ばなし」は市原さんの宝物だった。05年12月4日付の日刊スポーツのインタビューでは「私たち大人の興味のあること、やりたいことをやっていて、それが良かった。見て育った方が大人になり、子どもに見せたいと思った」と話していた。仕事に一切の妥協を許さない姿勢は、声優でも同じだった。