元アイドルグループSKE48のメンバーで現役歯科医としても活躍する矢作有紀奈(28)が芸能活動を本格再開させている。18年11月のグループ卒業後は国家試験準備のため活動を一時休止していたが、22年2月に無事に合格。アイドル兼歯学部生から、歯科医と芸能活動の二刀流へと形を変えて進む思いを聞いた。【松尾幸之介】

「人生は千も万も道がある」。国家試験前に矢作がよく自身に言い聞かせていた言葉だという。「叔母がよく言っていた言葉です。自分の中にも響いて、YouTubeチャンネルを始めてみたり、行動にもつながりました」。

アイドルになったのは21歳の時。すでに歯学部2年生として勉学に励んでいた。のちにAKB48に加入する妹の影響でオーディションを受け、年齢制限ギリギリながら見事合格。大学を休学してアイドル活動にまい進した時期もあった。歯科医になるという目標も諦められず、試験準備などのため18年11月に卒業。両立の難しさも痛感したが、今は「アイドルをやってよかった」と話す。

「アイドルは人気の差が生々しく分かりますし、自己プロデュースの考え方なども変わりました」と振り返り「それまでは自分に自信がなかったですが、学校でもSNSで経歴を知って面白いと思っていただけたり、声をかけてもらえることも増えました。広い視野も持てるようになりましたね」

22年に受けた国家試験は見事一発合格。ほぼ同時に芸能活動も再開した。10月も出演映画「14歳のなつやすみ」(渡邊豊監督)が公開。同3日にはTOKYO MX2の番組「キラメキ放送局」(火曜深夜2時5分)内で永井結菜とのダブル主演ドラマ「ワンハウス2」も放送が始まった。ドラマは田舎の施設で働く矢作演じる職員が、そこで起こるさまざまな問題を仲間と共に解決していく物語だ。芸能界では珍しい歯科医と女優の両立生活。「歯科医としてはSNSなどでの発信が目に留まりやすい方だと思うので、そうしたことを活用して定期的な検診など、予防歯科に関する日本人のリテラシー向上につながるような呼びかけもしていきたい」と意気込んでいる。

今はシンガー・ソングライターとして活動する妹萌夏の存在も刺激になっている。同じ48グループでアイドル活動を共にし「私は妹が誰よりもかわいいと思ってます」と笑う。9月には萌夏が「行ってみたい」と自身の働くクリニックを訪れたといい「妹も歯科医になった私のことを尊敬してくれていて。妹は歌がうまかったり、私にはない才能を持っている。お互いの存在が刺激になっています」。

かつては姉妹で音楽番組で共演したこともあった。同じ芸能界に身を置く立場としてのひそかな目標もある。「お互いの活動がうまくいったら、また共演してみたいなと思っています。妹と地上波の同じ番組にまた出てみたいですね」と力を込めた。

歯科医としては「20代のうちにやっておきたい」と興味のある訪問歯科などにも取り組む。「少子高齢化も進んでいますし、これから需要も増える分野だと思います」。SKE48劇場を訪問してのメンバー診療などを提案すると「いいですね。やってみたいです(笑い)」と笑顔をみせ「芸能活動と掛け合わせたことも今後どんどんやっていけたら」。自分らしく、オリジナルの“道”を歩いていく。

◆矢作有紀奈(やはぎ・ゆきな)1995年(平7)3月13日生まれ、埼玉県出身。15年に昭和大歯学部に入学し、大学2年時にはミスコンテストで優勝。16年にSKE48の8期生として加入。17年の21枚目シングル「意外にマンゴー」で選抜入り。18年11月にSKE48卒業。22年2月に歯科医師の国家試験に合格。現在は都内のクリニックに勤務しながら芸能活動を行う。8学年下の妹は元AKB48でシンガー・ソングライターの矢作萌夏。