“泥だらけの白帽”が大外から-。最内枠からスタートしたはずのソールオリエンスが、最後は出走18頭のいちばん外から飛んできました。そのシーンがすべてを物語っています。
前半1000メートルの通過は58秒5。重馬場を考えれば相当に速いペースでした。馬群は縦長になり、前のグループと後ろのグループに分かれる形でした。1枠1番のソールを横山武騎手は序盤から後方へ導きます。1コーナーからすでに馬場の悪い内を避けて外寄りの進路を取り、向正面ではいつでも大外へ出せるポジションを確保しました。
4角では、前走と同様に外へふくらむ面も見せ、かなり距離をロスしています。それでも直線は、ダントツの上がり35秒5で突き抜けました。差し馬は時として、こんなに強いのか…という脚を使います。これは展開がはまった時が多く、今回もいわゆる前崩れです。上がり2位の馬との差は0秒9。そこまでの力の差がない中での“この差”は横山武騎手の大胆な乗り方が引き出しました。
馬が騎手を育てる、とよく言います。横山武騎手は21年の年度代表馬エフフォーリアからいろんな経験を得ました。皐月賞でのG1初制覇。続くダービーでの鼻差負け。さらには有馬記念制覇にその後の不振と、同馬とともに笑って泣いて積み重ねた経験が確実に力となっています。そうでなければ、今回のような競馬はできません。もちろん、馬場や展開も読んだ上での騎乗だったと思いますが、人馬とも今後にさらなる夢が描ける快勝でした。
2着タスティエーラは前崩れの中、好位の後ろから正攻法で一番強い競馬をしました。あのレースをして負けたのなら、勝ち馬をほめるしかありません。3着ファントムシーフは直線で一瞬、進路を内へ切り替えるシーンがありました。良馬場ならもっと際どかったと思いますし、ダービーでは有力な1頭でしょう。(JRA元調教師)






