元なでしこジャパン主将の澤穂希さん(37)が、政界の道を断って女子サッカー界の発展に貢献することが9日、分かった。昨年末に自民党からの出馬要請を辞退していたことが判明。なでしこジャパンの次期監督に、旧知のU-20(20歳以下)女子日本代表・高倉麻子監督(47)が就いた場合、指導者として支える考えがあることも明らかになった。新婚生活との兼ね合いも考慮しながら、20年東京五輪に向けた日本の復権を目指す。

 澤さんが覚悟を決めていた。なでしこジャパンがリオ五輪出場を逃した最終予選が終わり、未来への第1歩を踏み出す日。テレビ中継のゲスト解説で後輩の姿を見届けたレジェンドが、女子サッカー界のために立ち上がることを決意した。

 政治家への道を断っていた。今夏の参院選へ向け、昨年12月の引退以降、自民党内から「出馬待望論」が出ていた澤さんが、自民党サイドからの「打診」を断っていた。

 党側は、なでしこジャパンで見せた澤さんのリーダーシップ、高い知名度を評価。比例代表か、現職以外に新人の擁立が決まっていない東京選挙区を念頭に、澤さんサイドに働きかけた。関係者によると、昨年末ごろ、政界転身や参院選出馬について、澤さんの意向を確認する機会が持たれたという。しかし、澤さんはサッカーの現場に対する思いが強く、最終的に出馬要請に応じることはなかったようだ。

 その現場の思いとは、コーチになることかもしれない。退任を表明した佐々木監督の後任として有力視されるのが、U-20女子代表の高倉監督。読売ベレーザ(現日テレ)時代のチームメートで、代表では96年アトランタ五輪に出場。澤さんが姉のように慕う存在だ。関係者によると、澤さんは「高倉さんとなら一緒にやりたい」と話したことがある。高倉さんがA代表の新監督に昇格した場合、澤さんがコーチなどでサポートする道が開けてくる。

 一方で幅広くサッカー界のために尽力する選択肢もある。日本協会の次期会長を予定する田嶋副会長は「彼女の功績は大きい。どんな形であれ、かかわっていただきたい」と明言。日本協会の特任理事などフロント的な立場でも、協力を要請される可能性がある。

 昨年8月に結婚しているため、いずれにしても新婚生活との兼ね合い次第。2世の誕生にも希望を持つ中で、サッカーに絞って日本のために尽力していく。

 ◆澤穂希 さわ・ほまれ。1978年(昭53)9月6日、東京・府中市生まれ。MFとして日本代表通算205試合83得点はいずれも男女を通じ史上最多。2015年8月に辻上氏と結婚して、同12月の皇后杯限りで現役を引退した。