浦和は8日、トップチームの練習拠点であるさいたま市大原サッカー場に、クラブハウスを増設することを発表した。現存の器具庫、トレーニングルームを解体して生まれる555平方メートルに、鉄筋コンクリート造り3階建ての別棟を建設する。

 山道守彦強化本部長は「古くなっていたトレーニングルームをどうしようかというところから、話が始まりました」と説明した。

 昨夏、トレーナーやマネジャーを交えた話し合いの中で、プランが浮上。「今の施設の何がウイークポイントなのか。何ができるのか」と詰めていくうちに、他の施設も入れた別棟の建設案へと昇華した。

 選手からは「食堂をつくってほしい」などの要望も出てきた。充実した施設が浮かび上がってきたが、問題も生じた。既存のクラブハウスの3分の2ほどの建坪の中に、多くの施設を収容する必要が出てきた。

 階層数を増やせば、床面積は増やせる。しかしこの地区は「市街化調整区域」に指定されており、建物の高さが10メートルを超えてはならないと定められている。

 そのため、まずは廊下を設けないことで、各施設に床面積を最大限に割ける間取りを検討。さらに1階を半地下にする案を取り入れたことで「高さ10メートル以内の3階建てクラブハウス」完成が見えてきた。

 地下へと潜る分には制限がないため、1階のトレーニングルームは縄跳びも可能な天井高3メートルを確保。広さも約250m2になり、これまで屋外で行っていた肉体強化のトレーニングも可能になる。

 広くなった分、機材も充実させられる。もともと関ドクターが常駐する上に、冷水風呂や高圧炭酸泉などの設備も充実。Jクラブでも飛び抜けてけが人が少なかった。さらに食堂、仮眠室、リラクセーションルームなども設けることで、選手のコンディションをさらに保ちやすくなる環境ができあがる。

 「副産物」もある。これまでは食堂を使ったり、試合へ向かうチームバスの出発、到着地になったりと、選手寮の施設に頼る部分が大きかった。それが今後はクラブハウスでほとんど完結できる。

 山道強化本部長は「今でも選手寮には、下部組織の選手が12人住んでいる。トップチームの活動がクラブハウスで完結できれば、その分、選手寮をさらに下部組織のために活用できる」とうなずく。

 3階にできる食堂には、奥行き2・5メートルのテラスが併設される。ここにスポンサーや年間チケット保持者向けの特典席を設け、軽食を供しながら練習や練習試合を見てもらうプランが浮上している。

 発案から1年足らずで、認可と建設発表にこぎ着けた。「2位ばかりと言われてしまうこともあるけど、ここ数年ペトロビッチ監督や選手たちが安定して成績を出してくれているので、話を進められた」と山道強化本部長。「認可を取る上で、都築も協力してくれて助かった」と、クラブOBで元日本代表GKの都築龍太市議にも感謝した。

 「選手にぜいたくをさせるつもりはないけど、トップクラブと言われるからには、いろんな面でそれを体現しないといけないと思っています。選手もいい。お客さんもたくさん来る。勝つ。A代表にも五輪代表にも選手を出す。そしてさらに、施設いいよね、と。こういうこともがんばって、クラブの価値を上げたい」

 選手会長のMF宇賀神も「要望も聞き入れてもらったし、選手がここでプレーしてみたいと思うような施設になると思う」と期待した。「完成は1つの区切り。だからこそ、タイトルを取って花を添えたい。そのためにも、まずは明日の柏戦でしっかりと勝ちたい」と表情を引き締めた。