97年に日本初のサッカーナショナルトレーニングセンターとしてオープンしたJヴィレッジ(福島・楢葉、広野町)が20日、11年の東日本大震災による営業休止以来、約8年ぶりに全面営業再開を果たした。

同日、施設から徒歩2分の場所に“平成最後の新駅”となるJR常磐線「Jヴィレッジ駅」も開業。朝一番に同駅に到着する電車に記者も乗り込み、車窓から真新しい新駅の様子を見た。

20日午前8時16分。予定より約2分遅れて電車はJヴィレッジ駅に到着した。いわき駅や広野駅から多くの関係者が乗り込んだこともあり、車内は身動きが取りづらいぐらい混雑していた。隣駅の広野駅を出て約3分ほど走ると、全長約215メートルあるというV字に伸びた白いホームが見える。多くのカメラマンが待ち構え、駅員や「ようこそJヴィレッジへ」などと書いた横断幕を持った方々らに迎えられて電車を降りた。

施設の全面営業再開と駅の開業を記念し、Jヴィレッジスタジアムでは震災以降初で約9年ぶりとなる、なでしこリーグの公式戦、マイナビ仙台レディース対ジェフ千葉レディースの試合も行われる。震災時にJヴィレッジ駅など福島エリアを管轄するJR東日本水戸支社に務め、現在は同社が親会社の千葉レディース運営部長の穐山健輔氏も電車に乗って新駅のホームに降り立った。窓からは電車にむかって手を振る人の姿が目に入ったといい「やっぱり(感情に)きますよね」とひと言。この地域は震災前から何度も訪れており「自然も豊かで、海も川もきれい。本当に素晴らしいところ」と話す。国土交通省によると4月20日以降の月内に新たに開業する駅はなく、Jヴィレッジ駅が平成最後の新駅。常磐線は震災の影響で今でも富岡-浪江間の運転を見合わせているが、20年には全線開通予定だ。穐山氏は「平成最後に駅ができ、令和になった来春に常磐線が全線開通すると聞いています。新しい時代にバトンをつなぐという形で、うれしいものだなと思います」と駅からの景色を見渡しながら話した。

ホームから改札へと続く階段には漫画「キャプテン翼」の原作者、高橋洋一氏がJヴィレッジのために書き下ろした作品などがプリントされており、BGMでは日本代表応援歌でおなじみのヴェルディ作曲の「アイーダ」が流れる。このほか、ホームにW杯や五輪の優勝トロフィーのレプリカを置くことを想定した台座を設置したり、駅舎をサッカーゴールをモチーフにしたものにしたりと“サッカーの聖地”をイメージさせる工夫が多く見受けられた。

これまでは最寄りだった木戸駅から施設まで約1・9キロあったが、新駅からは約170メートルと近く、アクセスは向上。一番電車到着後に行われた記念式典では、Jヴィレッジ社長を兼務する福島県の内堀雅雄知事が「Jヴィレッジのアクセス向上はこの地域にとって大きな意味を持つ」と話し、引き続きの復興支援を約束した。1歩ずつ着実に、福島は復興の道を歩んでいる。【松尾幸之介】