風間八宏監督(62)が率いる南葛SC(関東1部)が天皇杯の予選を兼ねる東京カップで東京蹴球団(東京1部)に快勝し、初陣を飾った。

風間監督が就任してから初の公式戦。1月に就任して以降「止める・蹴る・外す・運ぶ」の技術、最速最短でゴールへ向かう意識を植え付けてきた。

守備面でも、ボールを失った後の速い切り替えでの回収、立ち位置で相手の攻撃を制限することも整理してきた。

序盤は硬さが目立ち、前半15分までは攻撃が停滞。だが、徐々に前への意識が芽生え、以降は敵陣に押し込む展開が続いた。

前半27分にセットプレーから失点。風間監督は早くも前半38分に動き、2列目の右MFで選手交代を行った。裏に抜ける動きが出始め、前半45分には、交代で入ったMF佐々木達也(23)のクロスから同点。後半14分にはFW大前元紀のヘディング弾で逆転し、後半36分、後半45分にも追加点。終わってみれば4発で逆転勝ちした。

風間監督は「前半は珍しく、うちが硬すぎた。初めての試合なので。自分たちが行く方がぶれていたので、そこを少し方向修正した」。早い時間の選手交代も、佐々木が背後に抜けることでゴールへ向かう意識をチームに発信するメッセージでもあった。

南葛SCの各選手は、ボールを受けたらまず「前」を向き、「前」が第1選択肢であることが顕著に出ていた。ボールをつなぐ意識が強いあまり、バックパスを多用し、最終ラインで停滞するサッカーになることが多々あるが、南葛SCは違った。

各選手が同じ絵を描こうとし、中央のスルーパス、サイドからのクロスと、多彩でスピードある攻撃を繰り出していた。意思疎通が合わない場面もあったが、風間監督就任から2カ月で、連係連動ある攻撃がピッチで発揮されていた。

風間監督は「2カ月あったので。ある程度、頭には入れてくれた」としながらも「まだズレがあるので、しっかり埋めていかないと。もっと(テンポを)速く、正確にするためには技術」と、終わりのない技術向上を掲げる。ベテランFW大前元紀は1得点1アシスト、ボランチで途中出場したMF今野泰幸は、積極的に顔を出しボールを受け、一度もボールを失うことはなかった。

プロ選手とアマチュア選手が所属するチームだが、指揮官は「育成もプロもない。みんながうまくなって、そういうものができるようになると、作品になってくる。それはみんなが作る作品。そこは楽しみにしています」。4月からはリーグ戦が始まる。南葛SCがどんな“作品”になっていくのか、目が離せない。【岩田千代巳】