またまた大会新記録が誕生した。長野が2時間17分11秒で、3年ぶり8度目の優勝。従来の大会記録は09年長野の2時間18分43秒だった。そのタイムを長野だけでなく兵庫、埼玉、佐賀、静岡、茨城の上位6チームが上回った。

超ハイペースのレースを演出した選手の足元には、やはり、あのシューズが目立つ。米スポーツ用品大手ナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」シリーズ。世界陸上競技連盟が規制すると英メディアが報じるなどし注目を集めているが、トップ選手はどう思っているのか。その胸中を聞いた。

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ニューイヤー駅伝、箱根駅伝に続き、またも大会新記録だった。全7区間中、2区間で区間新記録が出た。区間タイ記録も2区間という高速レース。多くの選手はピンクや、オレンジとグリーンの厚底シューズを着用していた。その使用を世界陸連が制限するとの報道もある。今年の箱根駅伝で「花の2区」の区間新記録を樹立した相沢晃(22=東洋大)は、きっぱりと言った。福島のアンカーとして37分10秒と区間記録にあと1秒まで迫った後だった。

相沢 ナイキがずっと研究をして作り上げたシューズ。技術の進歩を止めてしまうのは正直、どうかと思う。走る上で靴は大切だが、選手にはそれに見合う走力がないと履きこなせない。大会新記録は選手が頑張っている結果。

世界陸連は専門家による委員会の検証結果などから、早ければ今月中に声明を出す見込みだともいわれる。内容次第ではシューズの変更が求められる。ナイキと契約している東海大を指揮し、広島までレースの視察に訪れた両角速監督(53)は自身も愛用し、レースに出ている。

両角監督 我々ははだしでなく、靴ありきでやっている。今までの性能を少し改良し100%に近い力を出せる靴で、決して120%の力を出してくれるものではないと思う。何が問題なのかが数値化され、その数字の根拠をどこに置くのか。無限に厚ければ速く走れるのかといったら、そうではない。規制されたら、記録が逆戻りする可能性はあるが、そうなったら受け入れて勝負をしていくしかない。大迫傑と同じ心境です。“早く決めてくれ”と。

16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)男子5000、1万メートル代表で1万メートル27分29秒69の日本記録を持つ宮城のアンカー村山紘太(26=旭化成)は、正直な感想を口にする。

村山 自分の足がしっかりできていたら、自然と前に進んでくれる。何ですかね? 魔法みたいに。機能面でもメンタル面でも一種のお守りのよう。新モデルは、より弾みが増えている感じ。

一方で東京五輪マラソン代表を目指し、3月の東京マラソンを見すえる埼玉のアンカー、ナイキの厚底を履く、前マラソン日本記録保持者の設楽悠太(28=ホンダ)は「ノーコメント」と言葉少なだった。【上田悠太】

○…他メーカーも反攻に必死だ。ミズノは真っ白の試作品を一部の選手に提供。箱根駅伝では10区で創価大の嶋津が履き区間新記録をマーク。ナイキに一矢報いた。ブランドやロゴマークが見えない謎めいた感もあり話題を呼んだ。アシックスも、靴底にカーボンプレートが搭載されている未発売モデルを一部の選手に提供しており、好成績を残している。