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島田高志郎、理想像は「羽生選手と宇野選手の混合」

18歳の青年が発した言葉は、すがすがしいものだった。11月24日、札幌。フィギュアスケートのNHK杯で男子12人中9位となった島田高志郎(18=木下グループ)はフリーから一夜明け、激しく揺れていた気持ちを整理できていた。「目指すアスリート像」について、尋ねられた時だった。

2019年11月23日、NHK杯 男子フリーで演技する島田高志郎(撮影・加藤諒)
2019年11月23日、NHK杯 男子フリーで演技する島田高志郎(撮影・加藤諒)

「う~ん…。もう言ってしまえば『2人の混合』というか…。一番難しいところだと思うんですけれど、本当に、僕はこうやって羽生選手の試合での強さだったり、練習から宇野選手を見られているので。欲しいところが多すぎて、なかなか絞り切れないんですけれど、そういった(2人の)良いところを自分のプラスに変える作業を、今後していきたいなと思います」

シニア1年目。グランプリ(GP)シリーズ2戦目で、初めて自国開催のNHK杯に出場した。ショートプログラム(SP)は6位発進だったが、フリーは4回転トーループで転倒するなど10位。演技直後はほほえんでいたが、近年にないほど泣きじゃくった。愛媛・松山市で育ち、岡山市でスケートに打ち込んできた。子どもの頃から憧れた舞台は「本当に苦い思い出になってしまった」。その中で強く胸に刻まれたのが、優勝した羽生結弦(24=ANA)の理想を追求する姿だった。

「羽生選手の『アスリートの魂』を肌で感じながら、一緒に練習を滑らせていただいた。練習でも自分に厳しく、自分に納得いかなかったら、できるまでやっていると思う。試合に関してはオンとオフの切り替えが、とてつもなく、うまくできている」

17年夏、岡山からスイスへと拠点を移し、06年トリノ五輪銀メダルのステファン・ランビエル・コーチ(34)に師事した。スイスでも実家から送られてくる白米を炊飯器で炊き、時には自らメンチカツを作った。「言葉も、生活も何もできなかった」。それでも常に前を向く心で、異国の暮らしにとけ込んだ。今年9月、日本から短期合宿で宇野昌磨(21=トヨタ自動車)がやってきた。メインコーチ不在で今季を戦う18年平昌五輪銀メダリストと、リンクで一緒に滑る機会が増えた。

「宇野選手の集中力だったり、スケートに対する真摯(しんし)さを肌で感じています。元々本当に努力家だと聞いていたので、イメージ通りと言えば、イメージ通りなんですけれど、さらにその想像を超えていく努力家。練習量を見れば一目瞭然だと思います」

今季は苦しむ宇野だが、羽生の背中を追い、平昌五輪でのワンツーフィニッシュなど、近年の男子フィギュア界を支えてきた。2人にはそれぞれ個性があり、第三者はどちらかに力を入れて注目してしまいがちになる。だが、島田の場合は日常を共有する時間が増えた宇野、大舞台にたどりついたからこそ見えた羽生からの刺激を全て吸収しようとする。その純粋な心が「2人の混合」というフレーズに示された。

「2人とも本当に素晴らしいアスリートで、2人とも全く違う系統のアスリートというか…。共通点はスケートに対する『魂』。人一倍『スケートで成功したい』っていう気持ちもあると思う。そこが僕には足りない。日本が誇るトップの選手たちを間近で、肌で感じられたので、その2人から受ける影響っていうものを、自分のプラスにしていきたいです」

初めてのNHK杯は公式練習、演技直前の6分間練習での調整に自信があった。それでも理想とする結果は出なかった。「実力が足りない…」と後ろ向きになっていると、ランビエル・コーチから「そんなことない。あと1歩まで来ていたからこそ、悔しい部分があるんだ」と背中を押された。涙を出し切り、朝を迎えて決意は固まった。

「本当に自分を責めて、自分に失望した昨日の夜だった。もう今となっては、それを糧にするように、努力するしかない。これからしていく自分の努力によって、このNHK杯の重みっていうものが変わってくる。それが、より自分にとって良いものになるように。『重みのある努力』を積んでいきたいと思います」

羽生も、宇野も、失敗を教訓にして、今の地位がある。肌で感じた悔しさと学びが、高く跳び上がるエネルギーになる。【松本航】


◆松本航(まつもと・わたる)1991年(平3)3月17日、兵庫・宝塚市生まれ。武庫荘総合高、大体大ではラグビー部に所属。13年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社し、プロ野球阪神担当。15年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当し、平昌五輪ではフィギュアスケートとショートトラックを中心に取材。

スポーツをこよなく愛する日刊スポーツの記者が、スポーツの醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。

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