女子レスリング五輪4連覇の伊調馨(33=ALSOK)を巡るパワハラ問題で、レスリング関係者からの告発状を内閣府の公益認定等委員会に提出した代理人の貞友義典弁護士(65)が2日までに取材に応じ「パワハラ問題は氷山の一角にすぎない」と主張した。

 5枚の告発状によると、栄氏は伊調が師事する元男子代表コーチの田南部力氏へ指導をやめるよう命じ、従わなかったため脅迫した。伊調の練習拠点、警視庁の出入りも禁じる圧力をかけた。栄氏からの直接的なパワハラは田南部氏が受け、伊調は間接的に受けたとされる。20年東京五輪の女子は栄氏が監督を務める至学館大関係者のみが出場すると明言したとも記されている。

 伊調の練習環境が整わないことを心配した関係者から依頼を受けた貞友氏は「伊調選手は至学館大出身で五輪5連覇すれば栄氏が名声を得られるのに、その機会をつぶしてまで今の自分のところから輩出したいのか。栄氏は伊調選手が引退しても、俺の下で優秀な選手が育っているから良いという考え」と指摘。協会は03年4月から現在8期目となる福田富昭会長と高田裕司専務理事の“長期政権”が続き「協会は北朝鮮と同じで、適切なガバナンス(組織統治)が必要。イエスマンしか理事になれない。この一連の問題は栄氏と伊調選手が握手して終わる問題ではない」と警告する。告発状に関与した関係者の1人は「栄氏はいつまで否定できるか。今は率直に寂しい」と話した。

 林文部科学相はこの日、5日以降に協会の倫理委員会が栄氏と伊調から聞き取りすることを明らかにした。伊調は1日、告発状に一切関わっていないと表明。栄氏と協会も告発状の内容に関して否定している。