6日に閉幕したイスタンブール・オープンで、日本男子4人目のツアー優勝を飾った世界ランキング84位のダニエル太郎(25=エイブル)が、優勝後初の試合をストレート勝ちだ。ツアー下部大会の初戦を、てこずりながらも突破した。

 ダニエルがツアー優勝を果たし、世界84位にまでなりながら、なぜツアー下部大会に出場しているのか、不思議に思う方も多いだろう。実はツアー大会へのエントリーは、大会開始の42日前が締め切り。最新世界ランキングは使えない。ダニエルの42日前の世界ランクは111位だ。逆に言えば、7日に発表された世界82位を使えるのは、その6週間後の大会へのエントリーからということになる。111位だと、なかなかツアー本戦に入るのは難しい。

 ただ、男子の層は非常に厚い。ツアー下部大会のレベルも非常に高くなってきており、ダニエルに言わせると「ツアーに優勝しても、ツアー下部大会で優勝できない人はいっぱいいる」。錦織圭や杉田祐一の活躍で、テニスを見る人が増え、その層の厚さを「外で見ている人も少しは分かってきているのかなと感じている」。加えて、ツアーに優勝してからツアー下部大会に出場すると「絶対に勝たなくちゃいけないという嫌な緊張感も出てくる」。決して気を抜けないというのだ。

 ツアー下部大会は、名がある経験豊富な選手がランキングを落とし、早く復帰しようともがく場所であり、若手が世界へはばたく登竜門でもある。少しでも早くツアーへ舞台を移そうと、虎視眈々(たんたん)と上位を狙う選手が山のようにいる。

 環境も、ツアーのように整っていない。ダニエルが戦っている今週のリスボンの大会も同様だ。全仏と同じ赤土コートとはいえ、その整備状況は雲泥の差。不規則バウンドは当たり前だ。1試合で通常7人ほどの線審も、わずか3人。6人ほどのボールボーイも2人しかいない。選手は、一刻も早く、そこから抜け出そうと必死だ。

 ダニエルもこの数年、ツアーとツアー下部大会の間を行ったり来たりしている。ツアー優勝をきっかけに、ここから抜け出したい気持ちは満々だ。「とにかくテニスを上達させて行けば、絶対にツアーで、またいつかいい結果が出てくると信じている」。テニスのツアーとは、かくも厳しい世界なのだ。【吉松忠弘】