仙台大明成(東北ブロック推薦・宮城)が、ラスト5秒で勝利をたぐり寄せる奇跡の逆転劇で、3年ぶり6度目の日本一に輝いた。初優勝を狙った東山(京都)を72-70で退け、09年の初優勝時から続く決勝6戦連続の「不敗神話」も生きていた。「八村2世」と称される山崎一渉(いぶ、2年)がチーム最多25得点10リバウンドで4戦連続ダブルダブルを達成し、決勝弾も決めた。山内ジャヘル琉人(3年)は後半に爆発。18得点5リバウンド4アシスト6スチールと全局面でけん引した。

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奇跡を起こした明成の選手たちの目にはうれし涙があふれた。2点のリードを守り抜き、試合終了のブザーが鳴ると、コート上、ベンチの2カ所で歓喜の輪ができた。第4クオーター(Q)開始直後には15点差離される絶望的な状況に陥ったが、徐々に点差を縮め「信じる力」ではね返した。

山内ジャヘルが覚醒した。67-67の同Q残り36秒、独特のリズムで切れ込むと、滞空時間の長い3点シュートを沈めた。チーム得点を「70」に伸ばし雄たけびを上げる。同4分13秒でも3点シュート、同3分44秒でも2点シュートを連続で突き刺すなど、前半の不調がうそのように終盤で勝負強さを発揮。70-67の同12秒からフリースロー3本で同点とされたが、同5秒、山崎一が決勝点を挙げた。

山内ジャヘルは「前半から第3Qにかけて全然シュートが入らなかった。(佐藤)先生に『何回も打て』と言われて無意識で打ったが入らなくて…。第4Q最後のスリーは気持ちで決めました」。粘り強くディフェンス、スチールで貢献し「苦しいときに俺が助けてやるという思いだった」と振り返った。

準々決勝で2連覇中の福岡第一に64-61、準決勝で昨年2連敗した北陸(福井)に60-58で競り勝ち、決勝含め3点差以内のゲームが続いた。3回戦では開志国際(新潟)と対戦予定も、同校が初戦で戦った相手関係者に新型コロナウイルス陽性者が出た影響で不戦勝に。福岡第一戦まで中2日空き、百戦錬磨の佐藤久夫監督(71)でも「こういう経験はなく、何がベストか分からない」と思わず漏らしていた。

指揮官は「ようやくラスト5分ぐらいで自分たちのバスケットができた。諦めかけたのは少しあったが、粘って勝てたのは自分の力を信じ、チームを信じて開き直れたのが大きい」。今春からやり始めた腕を曲げるようなポーズが絆の証しだ。「優しい選手たちを奮い立たせるように、同じしぐさをすることで、何かを感じてほしい思いがあります。恥ずかしがってましたけど、最後の方は応えてくれましたね」。3連覇(13~15年)したときのように杜(もり)の都の名門が黄金時代を築く。【山田愛斗】

▽仙台大明成・越田大翔(3年=最終学年で悲願の優勝、大会ベスト5にも選出)「1年のころからウインターカップに出させてもらい、ラストで協力し合って優勝できてうれしい」

▽仙台大明成・浅原紳介主将(3年=大会全体を振り返り)「試合がなくなったりいろいろなことがあったが、チーム全体として気持ちを引き締め、前向きに頑張ろうという雰囲気があり、それが粘りにつながって優勝できたと思う」

▽仙台大明成・一戸啓吾(3年=決勝を振り返り)「今大会は自分のプレーがあまりできない中で、(佐藤)先生やチームメートの支えがあり、決勝では自分のプレーができて悔いなく終われた」

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