村上茉愛(25=日体ク)が種目別決勝の床運動で14・066点をマークし、金メダルを獲得した。

冒頭に小6で決めた代名詞のH難度の大技「シリバス」を後ろへ一歩の着地で抑えると、トレードマークの笑顔も浮かべながら、技を決めていった。フィニッシュポーズを解くと、感極まったように手で口元をおさえた。

得点は13・966点と表示され、その時点で14・000点で1位のメルニコワ(ロシア連盟)に届かず2位だったが、その後に異議申し立てが認められて難度が変更され、14・066点となった。

世界選手権でのメダルは、日本女子で63年ぶりの金メダルを手にした17年大会の床運動、18年大会の個人総合の銀メダル、床運動の銅メダル、この日の平均台の銅メダルに続いて5個目となった。

「(今大会が)最後になるかもしれない。体操人生が21年目なんですけど、20年間のすべての思いを入れられたら」。東京五輪では日本女子として初めて個人種目のメダルとなる銅メダルを床運動で獲得した。心身共にやり切った思いは強く、進退を考えるようになっていた。

今大会に臨んだ動機は母英子さんだった。「母に近くで演技を見てもらいたい」。体操を始めるきっかけを作ってくれた母英子さん。中学生の時に体操に取り組んでいた母は、早くに娘の才能を見抜き、道を作ってくれた。美容師でもあり、トレードマークのショートカットを手掛けてくれる存在でもある。

東京五輪は新型コロナウイルスの影響による無観客開催で、最愛の人に直接見てもらうことはかなわなかった。「「自分のためではなく見てくれる人のために」」。感謝の思いを込めて、母の前で舞った。

◆村上茉愛(むらかみ・まい)1996年(平8)8月5日、神奈川県生まれ。2歳で体操を始め、小学生の頃は池谷幸雄体操倶楽部に所属した。17歳で13年世界選手権代表に選ばれ、種目別床運動で4位入賞。15年世界選手権では個人総合6位入賞など。16年リオデジャネイロ五輪は団体4位、個人総合14位。15年に日体大に進学し、卒業後も拠点を置く。愛称は「ゴムまり娘」。148センチ、48キロ。