日本が世界に誇るスピードスター対決は、木村敬一(28=東京ガス)が富田宇宙(29=日体大大学院)を制した。

男子50メートル自由形(視覚障害S11)で直接対決。予選は27秒04で27秒38の富田に先着を許したが、決勝では26秒90と底力を発揮して、27秒10の富田を振り切った。

「3割の力で泳いだんで、決勝では必ず勝ちますよ」。予選直後の木村は苦笑いを浮かべながら悔しそうに言った。そして、有言実行。決勝後は「もう120パーセントですよ。宇宙さんに長い距離からつぶされてきて、もう僕には50ぐらいしか残っていませんから」と、また苦笑いした。

リオ・パラリンピックで4つメダルを獲得した日本のエース。ただ昨年、障害が悪化した富田のクラスがS13(弱視)から自分と同じS11(全盲)に変更になって、状況が一変した。

今季の自由形世界ランキングで木村は50メートルの1位だが、100、400、800メートルの1位は富田。世界で勝つには、まず富田を倒さなければならないほど実力は拮抗(きっこう)している。20年東京へ自分自身を鍛え直すため、今春から単身渡米してシカゴを拠点に練習を積んでいる。英会話もまだ十分ではなく生活自体もハードだが、成長の手応えも十分に感じている。「新しい刺激を求めました。東京までこのままでいくと思います」。

この日は100メートル平泳ぎ(SB11)も1分12秒29のに大会新で制覇した。9月には50メートル平泳ぎで31秒35の世界記録も樹立した。木村が進化を続けている。