やったー! 優勝したぁ!! ってニコニコの笑顔で登場するのを想像していたヒーローは、「こんにちは。初めまして」ときゅっと引き締まった丁寧なあいさつで声をかけてくれました。

今回のヒーローは、松村敏選手(35=熊本出身・福岡支部)。2月1日に児島で優勝した直後にお話をうかがってきましたよ。

「おめでとうございます」と伝えると「いやぁ、なんか最近はもう全然(優勝)できる気がしてなかったんで…」という松村選手。そのわけを尋ねると「やっぱりスタートですね。去年、期初めにF(フライング)切っちゃってからずっと行き切れなくて…。僕の場合、優勝とかするには行き続けないといけないのに、そういうのが全然なかったんです。でも今節は、節間ずっと、予選も含めて結構自信を持って行けてました」とホッとした表情を見せてくれました。

「僕が10代の時には熊本ではボートのCMとか全然なかったんですけど、18歳の時に、たまたまテレビでボートの特集やってて“これだな!”って思ったんです。それで調べてみたら体格とかがちょうど良くて、父に『やってみたい』って言ったら、荘林(幸輝=元ボートレーサー)さんとうちの父親が同級生だったんですよ」と2つの不思議なご縁がボートへのきっかけだったと言います。

15年3月、平和島でのダイヤモンドカップでG1初優勝を飾り、水神祭の後にガッツポーズの松村敏選手
15年3月、平和島でのダイヤモンドカップでG1初優勝を飾り、水神祭の後にガッツポーズの松村敏選手

やまと学校(現ボートレーサー養成所)も無事に卒業し、なんとデビュー節に水神祭も上げた松村選手。「ひとまくりだったんですけど、同期でも早い方だったんで“こんな未熟な僕でも取れるんだ!”と自信になりましたね」とゆっくりと、当時を思い出しながら話してくれました。

その3年後には初優出、そのまた3年後には初優勝を飾り、松村選手の強さを見せつけたのが(15年3月に行われた)平和島でのG1ダイヤモンドカップ。同じあっ旋を受けていたうちの旦那様が「すごかったよぉ。やっぱり武器を持ってるって強いよねぇ」って話していたことを伝えると「そうなんですよぉ。水神祭してもらったんです。ホントあの時は神がかってましたねぇ。スタートめちゃくちゃ見えてたし」とテンポよく話し始め、「エンジンも(複勝率)40%くらいのを引けて、流れも来てましたしエンジンも出てて、(予選を)トップ通過できた時に“もうこれは優勝しなきゃ駄目だ!”と自分に言い聞かせたんです。そんなG1とかで得点トップとか、まぁそうあることじゃないから、これを逃したらもう絶対に次はないぞ! という気持ちでいきました。だからホント疲れましたよ。これまでの選手生活を振り返っても一番っていうくらい。あれでだいぶ精神面鍛えられた気はします」と笑いながら振り返ります。

実際のレースについても「実はあの優勝戦、1周2Mで大振りこみしそうになって、その次のマークまでとにかく一生懸命だったんです。抜け切れてからやっと優勝の実感が湧いてきて…もちろん、やったー! という思いもあったんですけど、ゴールして最初に思ったのは“無事に終わったぁ”でした(笑い)」と、何かをやり遂げたという達成感がとても大きかったと話してくれました。

2月1日に児島で優勝した松村敏選手。その直後に取材に応じてくださいました
2月1日に児島で優勝した松村敏選手。その直後に取材に応じてくださいました

G1ウイナーになった後、「それまで(体重が)53とか4キロくらいで重かったんですけど、その平和島の優勝で初のSGが決まったんで、これはちゃんとやっとこうと思って、そっから51をキープしてます。」と意識の変化も生まれます。さらに「スタートもG1取る前からそこそこ早かったんですけど、G1取ってからですねぇ。完全にスタート野郎でいこうと思ったのは。周りからもそう言われだしたし、“行かなきゃ”って気持ちになっていきました」と意外にもスタートを武器に! と自覚したのはこの頃だったんだそう。

スタートの秘訣(ひけつ)は“気持ち”という松村選手。

「やっぱり怖いんですよ。フライング切るの。切ったら休みが…、とか事故点が…とかそういう一瞬の恐怖を乗り越えていかないと早いのとか行けないんで、そのコントロールですよね。それをいかに越えるかだと思いますけど、でも切ったら意味がないのでやっぱり切らずに早いっていうのが本当のスタート巧者だなと思ってます。そこを大事にしながら、レースしててスタートばっちーんと決まってひとまくりできた時は楽しいし爽快ですから」と優勝を手にしたヒーローの、自信を持ったいい表情を見せてくれました。

 
 

去年7月にレーシックを行ったという松村選手。「だいぶ視力も落ちてたんですけど、今はばっちりです。ちゃんと毎日目薬差して、今は目の管理と体のメンテナンスは欠かさずにやってますよ。やっぱそっちの方がスタートも思い切って行けるはずなんで」と気分爽快なスタートのための日々のメンテナンスも、大事にしているとのことでした。

 
 

3月9日ボートレースチケットショップ日向、3月10日ボートレースチケットショップ高城にて、「BTSスペシャルトークショー」が開催されます。両日とも午後1時から。選手トークショーや予想会、サイン会、じゃんけん大会など盛りだくさんの内容で皆様をお待ちしております。

ゲストは、ボートレースコメンテーターの藤本太幸さん、ボートレース芸人のサカイスト・デンペーさん、そうしてなんと、選手ゲストは石川真二選手!! 皆様どうぞ、各会場にお越しくださいませ。