【ヤマコウの時は来た!】

 まず、個人的に気になった選手を1人。3R出走の畑段嵐士。2日目1予9Rで、早坂秀悟のカマシをこらえてゴール前の4角まで先行したが7着。レース後、初めてのG1を走った感想を聞くと「自分のレースをしようと思っていましたが逃がされました」とコメント。大物になる予感がした。

 そして今日取り上げるのが金子貴志。2日目特選11R、竹内雄作の後ろで大塚健一郎との競り。9着だったが、負けて価値あるレースだった。最後まで執拗(しつよう)に攻める姿は最近の金子に足りなかったものだと思う。

 初めてタイトルを取ったのが13年の寛仁親王牌。そのまま年末のGPまで優勝し、一気にタイトルを量産。その原因の1つに(深谷知広の後ろで)飯嶋則之相手でも決して逃げずに競り勝った寛仁親王牌決勝がある。あれで、金子は簡単には引かないとイメージが付いた。それ以来、競りにこられる回数は減った。

 しかし昨年の寛仁親王牌決勝は、脇本雄太の番手を回りながら武田豊樹に奪われ、その後のフォローがなかった。よくいえば、自分が追い上げて新田祐大のまくりを引き出したくなかった。悪くいえば勝負を避けた。その結果、タイトルが遠のいたといえる。誰よりもストイックに自分を追い込む金子だけに、タイトルホルダーとして守りに入っていたことに物足りなさを感じていた。

 しかし今回の金子は違う。昨日、あれだけの闘志を見せたことは絶対プラスに働く。小松崎大地という難敵がいるが、佐川翔吾を利して準決入りを決めるだろう。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)