超新星が偉業を達成した。地元の山口拳矢(25=岐阜)が2角7番手からまくり、デビュー最速となる479日(1年114日、デビュー日を含まない)でのビッグレース優勝を果たした。KEIRINグランプリ(GP、12月30日・静岡)出走も視界に入れた。2着は平原康多、3着は鈴木裕が入り、人気の新田祐大は4着に敗れた。

この男は持っている。山口がデビュー最速ビッグレース優勝の記録を鮮やかに塗り替えた。道中で内に潜り込んでレースを動かし、最終的には7番手。2角から渾身(こんしん)の力で踏み込み、S級S班もナショナルチームもまとめて粉砕した。ゴール直後に右手で小さくガッツポーズ。涙はない。「信じられない。中部1人だったし、感慨深いです」と爽やかに笑った。

優勝インタビューで父ヤマコウから「(まくり主体の)走り方に賛否両論あるけど」と聞かれると「自分は自分なんで。アドバイスはしっかり自分の中にしまって、そこで取捨選択できればもっと上に行けると思う」と、一本筋が通った一面をのぞかせる。一方で、記者会見で優勝賞金2269万円の使い道について聞かれ「原付(自転車)が欲しいですね。(愛車の)ロールスロイスは近い所に行くのには不便過ぎるんで」と笑わせ、頭の回転の速さも証明した。

これで、深谷知広が持っていたデビュー最速ビッグ優勝記録を45日更新。獲得賞金も8位まで上昇し、夢のGP出場も見えてきた。実現すれば史上最速のSS班。「(GP出場を)意識します。寛仁親王牌も、F1も取りこぼさないようにやっていきたい」と、今後は年末に照準を合わせる。3月に地元大垣で行われたルーキーチャンピオンを制するなどここ一番になると力を発揮する。「僕は一発勝負に強いんですかね」。12月30日は静岡で、赤いパンツをはいているかもしれない。【栗田文人】

◆山口拳矢(やまぐち・けんや)1996年(平8)1月26日、岐阜県大垣市生まれ。日大中退。競輪選手養成所117期として20年5月29日に小倉ルーキーシリーズでデビュー(1<1>(1))。7月の本格デビュー後にマークした20連勝は深谷知広と並び最長。通算106戦71勝、通算獲得賞金は6828万8900円。166センチ、70キロ。血液型A。

◆最速ビッグV 山口拳矢は昨年5月のデビューから最速となる479日(1年114日)でビッグレース初優勝。これまでは10年12月に同じくG2のヤングGPを制した深谷知広の524日だった。G1最速Vは11年6月高松宮記念杯を勝った深谷の683日。

◆GP出場争い 今年のG1を勝った郡司浩平、松浦悠士、宿口陽一、古性優作は確定。残るG1は2つで権利のない選手が優勝すれば賞金で出られる椅子は3つ。寛仁親王牌の準V賞金が1540万、競輪祭は準Vが1796万、3着が1176万。今後のG1戦線次第だが13位の武藤龍生あたりまでチャンスはありそうだ。