マイアミの奇跡が、20年後の日本を第1シードに押し上げた!? 日本代表はW杯ロシア大会2次予選最終戦シリア戦を終え、最終予選に進出した。A代表と並行して、弟分のU-23(23歳以下)日本代表もポルトガル遠征で、前回ロンドン五輪王者のメキシコを撃破。日本サッカー界にとって、明るいニュースが、ここ数日間流れている。シリア戦の翌30日、海外組が次々と活躍する各国リーグへ出発し、空港取材を終え夜勤業務のため会社に戻ってきたとき、1通のメールが日本サッカー協会(JFA)から届いた。
内容は今夏出場を決めているリオデジャネイロ五輪出場国が16チーム決定し、ポット(シード)分けに関するメディアリリースだった。出場国には、直近過去5大会(96年アトランタ五輪から前回の12年ロンドン五輪まで)における獲得ポイント(勝ち=3、分け=1、負け=0)が加算され、ポイント順にシードが決まる。加算率は以下の通りだった。
12年ロンドン五輪(以下ロ)=100%
08年北京五輪(以下北)=80%
04年アテネ五輪(以下アテ)=60%
00年シドニー五輪(以下シ)=40%
96年アトランタ五輪(以下アト)=20%
さらに各大陸予選(日本でいう1月のU-23アジア選手権)の優勝国にはボーナスポイントが5点加算される。この計算式によって出た日本の合計ポイントは20・8点だった。詳細は以下の通り。
ロ 3勝1分け2敗(10)=10ポイント
北 0勝3敗(0)=0ポイント
アテ 1勝2敗(3)=1・8ポイント
シ 2勝1分け1敗(7)=2・8ポイント
アト 2勝1敗(6)=1・2ポイント
アジア予選優勝ボーナス=5ポイント
合計 20・8ポイント
ポット分けを見ると、第1ポットには開催国ブラジル、アルゼンチン、メキシコに次いで日本が入っている。A代表がW杯アジア最終予選で第3ポットこそ免れ第2ポットが決定したばかり。メダルを争う五輪で日本が第1ポットに入った理由が気になり、夜勤業務そっちのけで出場国全チームのポイントを計算してみると、意外なことが分かった。全チームのポイントは以下の通り。
◆第1ポット
ブラジル=開催国
<1>アルゼンチン=30・4
<2>メキシコ=24・2
<3>日本=20・8
◆第2ポット
<4>韓国=20・2
<5>ナイジェリア=20
<6>ホンジュラス=6・6
<7>イラク=5・4
◆第3ポット
<8>スウェーデン=5
<8>フィジー=5
<10>ポルトガル=3・2
<11>南アフリカ=2・4
◆第4ポット
<12>コロンビア、アルジェリア、デンマーク、ドイツ=すべて0
日本と韓国の差はわずか0・6ポイント。U-23アジア選手権で優勝したことが何よりも大きいのだが、過去の本大会での成績が反映されている。しかも、0・6ポイントというのは、計算式上アトランタ五輪の1勝分と同じポイント数。あのブラジルを破り「マイアミの奇跡」と言われた金星が、20年後にそのブラジルで開催される五輪を戦う日本に追い風になるとは、誰も予想していなかっただろう。
当時中学生ながら、テレビにくぎ付けにされた奇跡の一戦。早速デスクに報告した。しかしアテネ五輪を現地で取材した佐々木デスクは「山本(昌邦)ジャパンがガーナに勝ったことが大きかったんだ」と一言。せっかくの計算を無に帰すことだけは避けたいと、コラムで書かせていただきました。長文おつきあいしていただき、ありがとうございました。【栗田成芳】
◆栗田成芳(くりた・しげよし)1981年(昭56)12月24日生まれ。サッカーは熱田高-筑波大を経て、04年ドイツへ行き4部リーグでプレー。07年入社後、スポーツ部に配属。静岡支局を経てスポーツ部に帰任。14年W杯ブラジル大会取材。今季のJ担当クラブは東京、甲府、東京V。