日本代表のW杯(ワールドカップ)ロシア大会は、16強で幕を閉じた。決勝トーナメント(T)1回戦でベルギーに逆転負けを喫し、初の8強進出はならなかった。しかし、FIFAランキング3位の相手から決勝T初得点を奪い、一時は2点のリードを奪った。優勝候補を追い詰めただけに、「勝ってほしかった」が正直な感想だった。

 戦前の下馬評を覆し、日本中に夢と感動を与えたベルギーとの激闘。ジュビロ磐田で指揮を執る元日本代表の名波浩監督(45)は、どう見たのか-。話を聞くと、後半49分に浴びたカウンターに対して必死に帰陣したDF昌子源(25)に賛辞を送った。必死のスライディングはあと1歩届かず、決勝ゴールを許した。だが、その姿勢が目にとまったという。

 名波監督 直前のCKでゴールを狙った昌子が、約90メートルの距離を100%の力で戻っている。届かなかったけど、Jリーグでそれをできる選手は少ない。これが当たり前になっていけば、日本の未来は明るいよ。

 この言葉を受けて、ピッチを何度もたたいて涙を流した昌子の姿が頭に浮かんだ。試合後には「何で追い付けんのやろ、という悔しさ、ふがいなさが残った」と唇をかんだ。目の前で決勝点を決められたのだ。簡単に、整理できるはずもない。ただ、人任せにせず、全力で戻ったからこそ、見えた光景があったと思う。戻ったからこそ、あと数十センチ届かなかった悔しさはより強くなり、残り27秒の試合時間からでも仕留めにくる世界と差も肌で感じられたはずだ。

 国内組で唯一のレギュラーとして3試合に先発した初の夢舞台。最後に味わったこの悔しさは、きっと22年のW杯カタール大会に向けた大きな財産になる。「しっかりと守って、日本を勝たせる選手になりたい」。こうコメントした昌子の4年後が、楽しみだ。

 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。一昨年までは高校サッカーを取材し、昨年から磐田担当。