今季、関東大学サッカーリーグで流通経大が12年ぶり4度目の優勝を果たした。11月13日の最終節で、明大との直接対決を逆転勝ちで制した。2部から復帰1年目での見事なカムバック。中野雄二監督(59)は「苦しいシーズンだったが、選手が本当によく頑張ってくれた。同時に、スタッフも」と、チームに関わる全員をたたえた。

今夏、新型コロナウイルスの猛威にさらされた。8月、全寮制の227人の部員のうち38人に陽性が判明。きっかけは、陽性の疑いがあった選手が検査を受けたところ、陰性と診断され寮に戻ったが、実は陽性だったこと。医療機関からは謝罪もあった。中野監督は「世の中のために体力を削って力を尽くしている方々。責めることはできない」と語る。

当時、各病院も逼迫(ひっぱく)していた。入院や治療ができないような状況だった。寮にいる濃厚接触者は100人以上。対策本部を大学に設置し、陽性者は大学内の研修センターに、濃厚接触者は教室を使用して隔離することにきめた。

人数分の布団を敷き、トイレ以外はそこから出ない生活。必要に応じて防護服にマスク、サングラスも使った。8月12日に活動停止となってから、9月18日までの約40日間、続けた。濃厚接触にはならず寮に残った選手も、万全を期すため練習をすべて禁止した。

リーグ戦に復帰したのは10月2日の第18節。復帰戦で立正大に0-3の完敗を喫した。後半で3失点。すでに来季J1に7人を送り込むことが決まっていた優勝候補として、ショックの完敗だった。練習再開から試合まで2週間。最初の4日間は歩くことからのスタートだった。高地合宿を組むなど急ピッチで準備を進めるも、現実は厳しかった。

活動休止期間の試合が延期されたため、復帰後は中2日、3日と過密で試合が続いた。中野監督は「選手が壊れてしまうのが最悪のこと」と、メンバーを入れ替えながら日程をこなした。選手がそれに応えた。

明大に勝利の瞬間、ピッチには指揮官も過去に感じたことがないような歓喜の雰囲気に包まれた。1度は折れかけた心を全員で立て直し、コロナに打ち勝った。

11日には大学選手権の初戦を迎える。昨季2部でチームを大きく押し上げた曹貴裁元コーチ(現京都監督)も、可能な限りベンチ入りする予定。どん底からはい上がって頂点に上り詰めたシーズンの有終の美として、次のタイトルを取りにいく。【岡崎悠利】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)