ひざのケガの影響で日本代表を離脱したMF長谷部誠主将が4日、所属のフランクフルトへ戻るため羽田空港からドイツへ出国した。

 5日のサウジアラビア戦(ジッダ)へも直前まで向かう予定だったが、スタッフやハリルホジッチ監督らと話し合った結果、フライトや移動のリスクを考えて大事をとることになったという。チームとともに羽田空港までともに行動していたが、「このエレベーターに乗ったら出国、というところで(スタッフと)ミーティングをした。チームは先に入っていて、(離脱をチームメートに直接は)話すことはできなかった」。ぎりぎりまで悩んだ末の決断だった。

 今年3月に右膝を手術してから、急ピッチでリハビリに取り組んだ。トレーニングの再開時はうまくいかないこともあったという。「ボールを使ってジャンプしたりステップすると、痛みもあった。計画通りに進まない中で、無理してやった」。万全とはいえないコンディションながら、8月31日のオーストラリア戦(埼玉)に間に合わせた。

 代表に合流してから、試合2日前までは別メニュー調整だった。「戦術練習は一緒にやらないといけない。チームのためになっているのか、葛藤もあった」と、素直な心境も明かした。2-0で勝ってW杯出場権を手にしたが、ひざの状態は悪化した。

 それでもこの日、表情は前向きだった。「結果、無理してよかった。リスクを冒すタイミングもある」。オーストラリア戦ではフル出場し、ミスもありながら体を張って走りきった。主将としての責任感以上に、W杯という目標が長谷部を突き動かした。「W杯というのはそういう場所。切符をとるため、日本サッカーのために、自分がサッカーをできなくなっても本望。それくらいの気持ちでやっている。個人としてはプレーはよかったとは言えないけど、勝ってW杯が決まった。(無理した)意味が少しだけあったかな」。少しほっとしたような声色で、穏やかに笑った。

 チームは22歳のFW浅野拓磨や21歳のMF井手口陽介が躍動するなど、変革期を迎えている。長谷部は今年で33歳。「言いづらいけどフィジカルは落ちてきている感覚はある」と率直に話した。一方でこう続けた。「なんと言ったらいいか難しいけど、今が一番サッカー選手としてうまいんじゃないかなと思えている。余裕を持ってやれている。この感覚がもっといいものになれば」。自身の立ち位置を冷静に見る。

 台頭する若手をライバルとして認めながら、ポジション争いを歓迎した。「ハリルホジッチ監督は、とにかく状態のいい選手を使うというところではっきりしている。年齢は関係ない。世代交代というより、実績が関係ない正しい競争になっている」。ケガを押してつかみとったW杯の大舞台。スタメンの座を譲るつもりはない。【岡崎悠利】