サッカー日本代表の欧州遠征から外れたMF香川真司(28=ドルトムント)が、復権に懸ける思いを独白した。異例の行動となった10日ブラジル戦、14日ベルギー戦のスタンド観戦後、初めて口を開き、代表への覚悟を「これ以上ないほど考えた10日間」と告白。攻撃面に生き残りの活路を見いだし、来年6月のW杯ロシア大会へ再起の1歩を踏み出した。

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 代表愛を再確認できたことも大きい。「普段、自分がいるピッチをファンの方々と一緒に上から見て刺激になったし、必ずロシアの地に立つんだという決意が確固たるものになった。仲間と一緒に戦えない不思議な感覚、もどかしさも味わってみて、あらためて思いましたよね。代表は本当に特別な場所なんだって」。

 寝ても覚めても代表のことを思案した中、ふと7年前の景色もよみがえったという。「けが以外でスタンドから代表戦を見たのは、南アフリカ(10年W杯)以来なんですよ」。サポートメンバー止まりで23人に食い込めなかった21歳の夏。原点の風景に「純粋にサッカーしたいと思った。あの時は『27、28歳の選手の方が経験ある』とか言われても『そんなの関係ないやろ』と思ってたけど、今なら理解できる。選手としても人間としても、今が自分にとってはベストに近い。あとは結果を残すだけ。準備はできている」。落選で呼び覚まされた記憶に、今は背中を押された気がする。

 13年11月のザックジャパンも教訓にする。香川は不動の2列目としてオランダ(2-2)ベルギー(3-2)戦に出場。得点こそなかったが、1勝1分けという番狂わせの中心にいた。4年後-。明暗のコントラストに、気は引き締まる。「前回は内容、結果ともに出た中で、もしかしたらW杯への過信が生まれたのかもしれない。今は自分の力を表現できなければ、今後ベンチを受け入れること、メンバーから外れることも覚悟している。それくらいの気持ちでやっていく」。

 腹を決めた時、迷いなく照準を切り替えられた。「クラブではリーグ戦も(Rマドリード、トットナムと戦う)欧州チャンピオンズリーグもある。代表は来年3月。W杯まで3カ月なので、もうテストと言っていられない。そこまでに個人を高め、ほぼ完成に近い戦いをしないといけない」。

 不動の10番に背水の覚悟が備わった時、まだ見ぬ殻を破る転機となるのか-。ほとばしる代表への思い。必ず代表に返り咲く。「少しだけ」のはずが、独白は優に1時間を超えていた。(おわり)【木下淳】