07年途中から09年まで、サンフレッチェ広島のコーチを務めた森保にとって“上司”だったのがペトロビッチだ。「彼はインテリジェンスだし、勤勉で真面目な人。当時からいい監督としてのキャリアを積むなと評価していた」と、指導者としての将来性を見抜いていた。

 森保の賢さはカードゲームでも出ていた。キャンプ中はコーチ陣で夕食後、毎日ペトロビッチの部屋に集合してUNOと焼酎を楽しみながらサッカー談議に花を咲かせていた。「カードゲームをすると、その人の考え方が出るのでおもしろい」。勝負手を打つのが早い自身に対し、状況に応じて戦い方を変える森保。「勝負どころが分かっていて、勝てそうな時は早く勝負をしてくるが、カードの色が悪く1番で上がるのは無理だなと思ったら見極める」。森保が最下位になることはなかったという。

 普段から海外サッカーをチェックし、オフには直接海外に足を運び視察する姿を見ていた。「学ぶということに対して貪欲だった」。12年から広島の監督のバトンを託した。コーチ時代にペトロビッチから吸収していた森保は、システムなど戦い方を継続させた。「彼の色をつけながら、私が率いてた時代よりさらにいい結果を出せるチームに仕上げてくれた」と、3度のリーグ制覇を成し遂げた手腕を認める。

 キャンプ中の練習試合でけが人で選手が足りなくなった時、コーチの森保を控え組で出場させれば「ベストプレーヤーだった。後半、退いたら負けた」と、思い出話は尽きない。その愛弟子が背負う重責にも「彼のような人が代表チームを率いるのは非常にいい。カリスマ性も十分」と太鼓判を押す。初陣となる国際親善試合チリ戦(9月7日)の舞台は札幌ドーム。北の地での初采配と再会も楽しみにしている。(敬称略)【保坂果那】(おわり)