<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:日本-モンゴル>◇F組◇10日◇埼玉

長友佑都33歳、吉田麻也31歳、酒井宏樹29歳-。担当記者が独自の視点でつづる「Nikkan eye」では、W杯本戦を想定した最終ラインについて思案する。モンゴル戦では9月のミャンマー戦から顔ぶれの変わらなかったDF陣。DF冨安の負傷を機に、次戦はベテランと若手を融合させて、3年後に向けて“冒険”してみてはどうか。

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DF冨安が負傷離脱した。主将のDF吉田は試合後、「一番良くなかったのは冨安がケガをしたこと」と言った。確かにそうだ。タジキスタン戦に向けて必要な戦力であった上に、所属するボローニャの代表活動への協力態勢が変わるかもしれない。

でも、見方を変えれば「ピンチはチャンス」。冨安とポジションを争うセンターバックのDF植田、DF畠中には、W杯予選への出場歴がない。2人がアジア特有の“アウェーの戦い”で経験値を上げることは、森保ジャパンの底上げにもつながるはずだ。

W杯カタール大会を迎える3年後、34歳になった吉田が今のパフォーマンスを維持できているとは限らない。先を見据えた「冨安のパートナー探し」という点でも、15日のタジキスタン戦は価値ある一戦になる。

サイドバックの控え選手にも、機会を与えてみてはどうか。モンゴル戦では左足首の軽い捻挫とみられるDF酒井が負傷交代した。本人は試合後「次も大丈夫」と言ったが、冨安と同じことを繰り返してはならない。DF安西やDF室屋を抜てきして成長を促すのも、ひとつの手だと思う。

安西が初めて招集された3月の日本代表メンバーに、酒井やDF長友の名前はなかった。当時安西が所属していた鹿島の先輩で、日本代表の右サイドバックとして一時代を築いたDF内田はその際、こう言った。

内田 今回、長友さんと宏樹(酒井)がいないのはちょっと残念。いたほうが良かった。アイツ(安西)に足りないものを持っているから。世界、海外でやることを理解して、彼らは活躍してるから。

欧州での経験豊富なベテランから、吸収できるものの大きさは計り知れない。一方、彼らがいつキャリアのピークを迎えるのかは分からない。レジェンドたちが第一線で活躍しているうちに、ともにピッチに立ち、学べるものは学んでおくべきなのだ。

長友が10年ぶりの代表ゴールを決めたことは、裏を返せば、長友を超える存在が10年間出てきていないことを意味する。確かに現状、長友や酒井を超えるサイドバックはいないのかもしれない。しかし森保ジャパンが目指すのは、あくまで「3年後」だ。冨安の負傷離脱というネガティブな事象をきっかけに、思い切った采配にかじを切るのもアリかもしれない。【杉山理紗】