森保一「我々が持っている目標が私だけのものなのか、チームで共有しているのか」

温厚で柔和な表情を崩さない指揮官が、珍しく語気を強めた。19年11月17日、東京オリンピック(五輪)世代のU-22(22歳以下)日本代表が、同コロンビア代表戦に臨んだ。東京五輪での「金メダル」を目標に掲げている森保監督は、兼任監督の長所を生かし、A代表でも主軸に育っていたMF堂安と成長一途のMF久保をW招集。「現状ベスト」の布陣を編成した。

結果は0-2の完敗だった。ボールは保持できてもチーム内の連携はスムーズとはいえず、森保監督が常に求める「球際の攻防」も精彩を欠いた。この試合を、指揮官は五輪本番を見据えた一戦と位置づけていた。ワールドカップ(W杯)アジア2次予選キルギス戦を終えると、国際親善試合までの期間を利用し、敵地から帰国後すぐにU-22代表に合流。試合後には大阪へ移動してA代表に合流と、8日間で国内外合計6000キロ超の移動をこなした。そこまでするほど、この試合を重要視していた。

ほぼベストの顔ぶれをそろえての敗北。A代表組を次にいつ招集できるかも分からない。本番まで、当時であと8カ月。否応なしにも、危機感は募った。この言葉は、自国で迎える東京五輪への懸ける思いがあふれ出た、森保監督の魂の叫びとも言えるだろう。試合後、MF久保は「強いてよかった点を挙げるとすれば、負けたことで危機感が生まれたと思うし、不安も出てきたと思います」と振り返った。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東京五輪は2021年に延期となった。本番でメダルを獲得できた時、森保監督のこの言葉は輝きを増す。