サッカー日本代表FWオナイウ阿道(25=横浜)が初先発で初得点を含む、わずか6分間で衝撃のハットトリックを飾った。日本(FIFAランキング28位)は5-1でキルギス(同99位)に完勝。出場2戦目で初先発のオナイウは前半27、31、33分に連続得点。FW大迫の故障で追加招集された新戦力が、日本の新兵器に名乗りを上げた。今予選8戦全勝で終えた日本は、9月からの最終予選で7大会連続のW杯出場を目指す。

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23日間に及んだ異例の長期合宿の最後に、森保ジャパン待望の秘密兵器が誕生した。大迫の故障で6日に追加招集され、1トップで初先発したオナイウが前半27分、右足のPKで初得点を飾ると、2点目は左膝付近、3点目は得意のヘッドと、わずか6分間でハットトリックを達成した。

1点目は、自らがPKを蹴るという自己主張に、主将MF原口が理解。「(仲間に)蹴らしていただき、しっかり決めることができた。個人としてゴール、結果は出せたと思う」。大分時代の19年11月に代表初招集も、この夜と同じパナスタでのベネズエラ戦はベンチを温めるだけ。今回は大トリで主役になった。

ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、180センチ、75キロと身体能力に恵まれた。母園子さんは実業団の元バレーボール選手。その長男はJ2千葉時代の16年リオデジャネイロ五輪に予備登録され、横浜では今季16試合10得点と日本人最多得点を記録。横浜を退任したポステコグルー監督の秘蔵っ子でもあった。

ポスト大迫問題解決のためにも、初先発に指名した森保監督は「日本の選手層が厚いというところを見せてくれた。日本人トップスコアラーとして、結果を出してくれた」と褒めた。

前半8分にFW浅野のクロスにあと1歩及ばなかった場面のほか、好機は何度も訪れた。「シュートミスをしたところをしっかり決めきるように。攻撃の起点になるような、スイッチを入れた時の回数をもっと増やせれば」。本人は猛省も、時間の経過とともに体幹の強さで競り合いを制し、最終ラインへ飛び込み、味方のパスを呼び込んだ。

途中出場で代表デビューした11日のセルビア戦では、オフサイドで幻のゴールに終わっていただけに、留飲を下げる後半23分までのプレーだった。

責任感は強く、過去には「自分が妹と弟を大学に行かせてやりたい」と、家族思いの発言をしたこともある。この日は結婚3年を迎える夫人、7月に2歳になる長女、昨年9月誕生の次女のため、初得点後、左手人さし指を天に向けた。

9月からの最終予選へ、東京五輪組を加えた史上最も激しいメンバー争いが待つ。「チーム(横浜)があって代表に呼んでいただいた。高い目標に向かっていきたい」。家族、そして日本代表を支える頼もしいFWが現れた。【横田和幸】

◆オナイウ阿道(あど) 1995年(平7)11月8日、埼玉県神川町生まれ。ナイジェリア人の父アダムスさんと日本人の母園子さんの間に生まれ、小学2年の時に神川パルフェで競技を始める。FCコルージャ-正智深谷高。3年時の全国高校総体3位。選手権は2年時に出場。14年に千葉入り。その後、浦和、J2山口、大分でプレーし、20年に横浜へ。今季J1でリーグ3位の10得点(16試合)。J1通算72試合24得点、J2通算104試合32得点。19年に日本代表初招集。今月11日のセルビア戦で国際Aマッチデビュー。家族は妻と2女。180センチ、75キロ。