元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が1日、亡くなった。80歳だった。日本サッカー協会(JFA)の元会長で、オシム監督就任を“フライング発表”した川淵三郎氏(85)が2日、日本サッカー協会を通じてコメントを発表した。

川淵氏のコメントは以下の通り。

オシム元日本代表監督の訃報に接し、心から哀悼の意を表します。

オシムさんとの最初の思い出は、大阪の長居陸上競技場で行われた東京オリンピック5・6位決定戦「大阪トーナメント」。相手のユーゴスラビアに長身ですらっとしていて、非常にうまいセンターフォワードの選手がいたのを印象深く覚えていて、後になってオシムさんだったということを知った。素晴らしい選手だったから印象に残っているということはあるけれど、その人が42年後に日本代表を指揮したということは、やはり縁があったのかと思う。

最も思い出深いのは、僕の「オシム失言」とオシムさんが脳梗塞で倒れた時。大きな期待を受けて出場したFIFAワールドカップドイツでグループステージ敗退となり、とにもかくにも日本のファンに謝りたいと思って記者会見に臨んだ僕は、質疑応答に入ったところでうっかり「オシム」と口にしてしまい、大きな非難を浴びた。その失言によって代表監督を引き受けてくれなくなるかもしれないと心配したが、オシムさんは「会長がそんなことでいちいち謝ることはない」ととがめることもせず、引き受けてくれた。常に僕の立場を慮ってくれる人だった。

2007年11月にオシムさんが倒れたという一報を聞いた時は本当にショックで、毎日祈るような気持ちだった。ドクターらの献身的な働きによって何とか一命をとりとめ、ようやく面会できることになり病院に伺うと、リハビリが終わろうとしているところだった。その時の僕への第一声は「こんなに(リハビリで)痛めつけられて『ありがとう』と言わなきゃいけないのは承服できない」。その時のいたずらっぽい笑顔が忘れられない。

チームに対して献身的なプレーをする選手を重用し、含蓄ある言葉でチームに大切なことを教えてくれた。ジェフユナイテッド千葉に「オシムイズム」を浸透させ、多くの日本代表を送り出す強いチームに成長させた。Jリーグ各クラブにとって「オシムイズム」をもう一度、思い起こす時なのではないだろうか。オシムさんの教えをもう一度思い出し、強い日本サッカーをつくってほしいと思う。 イビチャ・オシムという偉大なる人物にジェフユナイテッド千葉、そして日本代表を指揮してもらえたことは日本サッカーにとって大きな名誉だと思う。心から哀悼の意を表します。