11月20日開幕のW杯カタール大会に向け、日本代表強化の責任者、日本サッカー協会の反町康治技術委員長(58)は今、何を思うのか-。「ナショナルチームダイレクター」の肩書でチームに同行し、カタールでもともに戦う。目標は日本代表史上初の8強であることを、あらためて強調し、前主将のMF長谷部誠(38=アイントラハト・フランクフルト)についても、言及。多弁で話術にも定評のある反町氏が、大いに語った。【取材・構成=岡崎悠利】
◇ ◇ ◇
ここまでで、できる準備はすべてやった-。その成果も出ていると、反町委員長の言葉には力がこもる。
反町委員長 (チームは)しっかりまとまっている。方向性も確認した。誰が最初に出ようが、交代で出ようが、大きな崩れはない。
2008年の北京五輪日本代表を率い、本田圭佑、長友佑都らが長く日本代表を支えるその土台を固めた。その後は、長くJリーグの松本などの監督を務め、現場で確かな手腕を発揮してきた。技術委員長の要職での日本協会入りは、20年3月。森保監督の兼任体制で進めてきた、東京五輪代表チームとの一貫強化に、この時点から加わった。
1年延期され21年夏に開催された東京五輪を踏まえ、A代表との「1チーム2カテゴリー」を掲げ強化を進めてきた。MF久保や堂安、三笘ら、東京五輪世代の多くの選手が、A代表で主力格になった。
反町委員長 W杯は日本のすべての力を結集する。4年間、五輪も含めた強化の集大成。
そう位置づけている。
1次リーグではドイツ、スペインという優勝経験国と同じE組。それでも、ベスト8という目標は変えない。
反町委員長 (日本が)到達できるラインは、どこが相手でも、あまり変わらないと思っている。じゃあ、イングランドの組(B組=イラン、米国、ウェールズ)だったらどうだったか? どの組に入ったとしても、厳しいことは間違いないから。
コロナ禍をへての開催となる今大会は、選手登録がこれまでの23人から26人、交代枠も3人から5人に、拡大して行われる初めてのW杯になる。メンバー選考も、変わってくる可能性がある。
反町委員長 たとえば、ある国に聞いたら、GKを(3人ではなく)4人にすると。1人はPK要員。そういう国もある。26人なら、入れると。今の日本代表は、複数ポジションをこなせる選手が多い。そうすると、前の方(=前線)が(厚みを持たせる)候補かもしれない。切り札というか、どの選手を、どう試合の中で起用していくかも、大事になる。
◇ ◇ ◇
ドイツもスペインも強豪。リスペクトしつつも、自信を口にする。
反町委員長 (目標は)ベスト8で満足しないように、ベスト8“以上”。ドイツとコスタリカ、スペインと一緒になったからといって、あげた手を、そっとさげるようなことはしない。どんな相手であれ、突き進んでやっていく。ベスト16までの実績がある。実現可能な目標として(ベスト8以上は)適正だ。
一方で、ここまでの歩みは、決して順調とはいえない部分もあった。予選突破後、集中的に強化できた6月には王国ブラジルとの華々しい国際親善試合は実現したが、欧州勢との対戦はかなわなかった。欧州は公式戦のネーションズリーグを戦っており、日程的にも、かつてのように国際親善試合を組むことができなくなっている。ただ、それも仕方ないという。
反町委員長 ヨーロッパがネーションズリーグやユーロ(欧州選手権)やっていて、(例えば)ブラジルだって強化するのに相手がいない。ブラジル連盟の幹部も困っていたよ。だから(6月に)「もう1回やるか?」と話したら「あまりやりすぎちゃうとな…」と言っていたけど(笑い)。ブラジルも相手をアフリカで探すか、アジアに目に向けたらイラン、韓国、日本くらいだろう。
あの手この手の強化が必要となる中で、9月のドイツ遠征では、前主将のMF長谷部を3日間限定で電撃的にサプライズ“招集”した。もちろん、反町氏にとっては準備、交渉の末のことだったが、18年ロシア大会を最後に代表引退したものの、今季は欧州チャンピオンズリーグで活躍する前主将のメンターとしての合流にチームは沸き、大きなインパクトを残した。
9月の活動前には、スタッフも含めて本番仕様で、と話していた。それだけに、本大会での長谷部の処遇が、にわかに注目を浴びている。ここはストレートに「何らかの形で関わるということか?」とぶつけてみた。
反町委員長 9月に参加したスタッフで(本大会も)やる、というところからいうと(長谷部も)入っているね。もし(試合の)前日に誰かケガをしたりしたら、それこそ、いきなり登録しているかもね。
ただ、リップサービスはここまでだった。
反町委員長 何人かの(選手の大枠の)リストはもらっているけど、入っていないよ。スタッフとしても、ない。
その理由は、4年間をかけて作り上げられたチームの強さ、たくましさを感じているからだ。反町氏は、森保監督への信頼を強調する。
反町委員長 日本人は、非常にまじめな人間性がある。日本代表の監督を務めるにあたり、熱量は必要なところ。信頼関係やぶれない考え方、感情的にならないところも見てきた。
W杯の結果いかんだが、当然、反町氏には森保監督の評価とともに、監督を誰に、どうするのか? という難しいミッションの責任者でもある。信頼する森保監督の処遇についても、どう考えているのか。
反町委員長 それは、私だけの判断じゃない。技術委員会で、しっかり判断します。
まずはカタールでの戦いを見てくれ-。どの回答にも、根底には、そんなメッセージが込められているようだった。反町氏も、日本はカタールの地で、世界に衝撃を与える準備ができていると、みている。
◆反町康治(そりまち・やすはる)1964年(昭39)3月8日、埼玉県生まれ。清水東高-慶大-全日空。社員として全日空、横浜Fでプレー。94年に平塚(現湘南)とプロ契約。日本代表として国際Aマッチ4試合0得点。97年に現役引退。01年にJ2だった新潟の監督に就任。J1に昇格させ05年に退任。06年から北京五輪世代の代表監督を務め08年北京五輪出場権を獲得。本大会は1次リーグ敗退。兼任でオシム監督のA代表コーチも務めた。09年に古巣湘南の監督に就任しJ1昇格へと導く。12年にJ2だった松本の監督に就任し、2度のJ1昇格を成し遂げる。19年に退任し、20年に日本協会の技術委員長に就任。日本協会の理事で、Jリーグでも理事を務める。指導を受けた選手からは「ソリさん」と慕われている。

