日本代表は23日、千葉県内で国内組だけを集めた合宿をスタートした。

 小雨が降る夕暮れのピッチに残ったのは、アルベルト・ザッケローニ監督(59)とDF酒井宏樹(22=柏)だった。代表招集2度目の酒井が監督から約20分間、過去最長の補習を受けた。約1時間半の全体練習終了後、他の選手がシュート練習やランニングなどをこなすなかで、監督は通訳を交えて身ぶり手ぶり、酒井は真剣に聞き入った。

 この日の戦術練習は、終始3-4-3のシステムで行われた。酒井は右サイドハーフに入ったが、所属先の柏では4バックシステムで育ってきた。3バックには慣れておらず、監督から「このシステムで迷うところがあると思うけど、効率よく守備と攻撃をしなさい」と指導を受けた。

 監督が追求する“攻撃的3バックシステム”において、オーバーラップを得意とする酒井は適材。しかし、4バックのサイドバックと違ってサイドハーフは高い位置を取るため、攻守の切り替えが重要になる。DFラインに下がって守備をするタイミングと、サイドを突破して攻撃に出るタイミング。両面において、高い質が求められる。「難しかった。分からないことが多すぎる。(4バックと)全部違う。普段のことはすべて捨てて、早く理解したい。監督が分かりやすく教えてくれて感謝している」と話した。

 特長を生かし成長させる。ザッケローニ監督は「クオリティーの高い選手。走力、フィジカルも技術もパーソナリティーもいいものを持ってる」と絶賛。これまで代表の同ポジションはDF内田(シャルケ)の定位置。頭脳派でスピードに乗った突破が武器の内田に対し、酒井は183センチの長身と攻守両面で強みになる強靱(きょうじん)なフィジカル。戦術理解度が加われば先発を狙える才能は十分ある。

 酒井は「残れれば光栄。でも残るためより、監督に好かれるより、自分のためにやっていく」とサラリ。ザックジャパンの新兵器が、さらに磨きを掛ける。【保坂恭子】