菊池将 クラブ側が用意してくれたメニューを食べ続けたら3~4キロ増えて、筋肉質になった。前より、臆することなく体をぶつけられるようになった。

 クラブが掲げる「日本のフィジカルスタンダードを変える」を食事面から徹底している。朝食の他、練習と仕事の合間にとる昼食、仕事後の夜ご飯は、いずれもクラブ側が管理したメニューだ。食事を提供する食堂は、選手が普段の仕事をするドームいわきベース内にある。倉庫内は無数の段ボールが置いてあり、選手を始め100人以上の正社員やパートたちが働いている。主な仕事は搬出を意味する動脈と、搬入を意味する静脈の2つの工程に分かれている。

 菊池将 仕事はもう慣れた。でも1年目は大変だった…。

 再始動初年度で快進撃を始めたいわきFCだったが、実は仕事との両立という面では苦労の連続だったという。

 菊池将 自分らはJリーガーになりたかったけど、なれなかった側の人間。なのに1年目はプロと勘違いしていた部分があって、与えられた仕事をちゃんとこなせていた人は少なかったと思う。

 選手たちが倉庫内で働く従業員すべてから、応援されてはいなかった。仕事を完璧にこなしていたわけではなかったので、当時はいわきFCの活動自体を快く思わない従業員もいたという。

 菊池将 自分も最初は仕事をあまりやれてなかった組。でもこれじゃ駄目だと、思えることがあった。

 ある日、菊池将は60歳を超える高齢のパートの人と2人きりで仕事をしていた。サッカーの練習終わりに仕事をしていた菊池将に気をつかって、パートが「いつもサッカーを頑張っているから、段ボールを運んであげるよ。休んでていいよ」と言葉をかけてきた。体に電流が走った瞬間だった。