元日本代表でJ2京都サンガDF田中マルクス闘莉王(38)が1日、都内のホテルで引退会見を行った。98年にブラジルから来日し21年。日本国籍を取得し、所属チームでも日本代表でも“闘将”としてチームを引っ張ってきた。19年のプロ生活を終え、今後は解説者を務める一方、ブラジルに帰って両親との時間を大切に過ごす意向を示した。

グレーのスーツ姿で登場した闘莉王は、時折、目を潤ませた。01年に広島からプロ生活をスタートさせて19年目。引退会見では「試合に関しては一瞬、一秒でも気合を入れ、頭が割れていても、肉離れしても、鼻が折れていてもピッチに戻ろうとした。その気持ちは誇りに思います」と闘将らしく、自身のサッカー人生を振り返った。

決断は昨年末。「少しでもサッカーへの炎が消えかかりそうになったら、年も関係なく引退する」と心に決めていた。熱い性格ゆえ、時には相手サポーターを挑発し、自チームのサポーターとも口論になったこともある。だが、この1年は、サポーターに感謝を伝えるためピッチに立った。「サポーターの方々に感謝を言いたかった。消えかかった炎を最後のエネルギーに変えて1年やりました」。人情にも厚い闘莉王らしい幕の引き方だった。

今後は東アジアE-1選手権の解説を務めるほか、ブラジルに帰って両親と過ごすつもりだ。98年に来日し、03年に日本国籍を取得。日本生活は22年に及ぶ中で、ブラジルの両親は60歳を超え妹が両親の面倒を見てきた。「父もやっと“帰ってこい”と言ってくれた。帰って少しでも、そばにいなかった時間を取り戻したい」と目を潤ませた。一方で「ブラジルに帰って、ビールをたくさん飲んで、肉をたくさん食べて、10キロぐらい太ってみんなに笑われる姿を見せたい」とジョークも忘れなかった。

サッカーがパスをつなぐ華麗なスタイルに進化する中、魂が熱い泥臭さを持つ選手の重要性を説いた。「技術が多少、優れなくても僕みたいに、一生懸命やってサポーターに喜ばれる姿勢をなくしてほしくない。気持ちを伝えられる選手が消えてほしくない」。ユニホームを脱ぐ闘莉王の「熱い魂」は後輩たちに受け継がれていくはずだ。【岩田千代巳】